インタビュー

ゴミ清掃員・マシンガンズ滝沢氏が見た、タピオカブームの狂騒――ゴミ集積所が映し出す“東京の変遷”

2019/08/31 17:00
千葉こころ

プラスチックゴミではなく人間の行動が“悪”

自販機専用ゴミ箱の入れ口をふさぐ、タピオカ容器(東京都・渋谷区)

――タピオカのゴミを街なかに捨てると、どのような問題が起こると考えられますか?

滝沢 容器が倒れて、液体やタピオカが周辺に散乱すると、害虫・害獣のエサになり、繁殖してしまいます。また、タピオカが雨や風で流されて街を汚したり、プラスチック容器が車にひかれてマイクロプラスチックが発生するなど、環境汚染や海洋汚染につながることも考えられますね。海に流れたプラスチックゴミの8割は街から出たものと言われていて、荒川の河川敷だけでも昨年1年間で4万本以上のペットボトルが回収されているほどなんです。

――日本でも、大手コーヒーチェーンが2020年半ばまでに使い捨てプラスチック製ストローの廃止を表明するなど、プラスチックゴミは世界的な問題にもなっていますね。

滝沢 ペットボトルやプラスチック製ストローは、基本的に使い捨てなので、使えば使うだけ製造され、同時にゴミが増えていくんです。1回しか使わないものなのに、僕らが死んでも数百年後まで残っているって、不自然だと思いませんか? プラスチックストローの廃止をきっかけに、環境問題への意識の変化や、プラスチック製品全体の需要・供給の削減につながっていったらいいなと思います。

――近年は、屋台の焼きそばなどで使われるプラスチックケースの代替品として、自然分解されるバイオ素材の製品が出てきているようです。

滝沢 ペットボトルもいずれ、“ペフボトル”(ペットボトルに近い特性を持ちながら、100%バイオ由来の樹脂でできている)に変わると言われています。ただ、僕は“プラスチック自体”が悪いのではなく、ちゃんと処分しない“人間が”悪いと思っているんです。今後、バイオ素材の製品が主流になったとしても、「自然分解されるから、ポイ捨てして大丈夫」と安心するのではなく、自分が買ったものには最後まで責任を持って、「正しく処分し、リサイクルに回す」といった気持ちや行動が重要だと考えています。

大人こそ「食べ物を粗末にしない」「ポイ捨てしない」ができていない!

――タピオカ以外にも、さまざまな食べ歩き系の飲食物がはやっていますよね。ゴミの観点からタピオカブームとはまた違うなと感じる場面はありますか?

滝沢 コンビニのホットスナックが充実し始めた時は、そこかしこにやきとりなどの竹串が落ちていましたし、チーズハットグがはやり始めた時は、紙製のトレイなどがよく捨てられていました。ただ、タピオカのように“食べ残し”はほとんど見かけませんでした。

――タピオカはSNS “映え”するという理由から、撮影目的で購入している人も少なくないようです。

滝沢 撮影目当てで購入した結果、飲みきれずに捨てているんでしょ? このような理由で捨てられた食べ物を見ていると、「金を払った後であれば、消費者はなにをしてもいい」という人間のエゴをものすごく感じるんです。子どもの頃、学校や家庭で「作ってくれた人の苦労を考えて食べなさい」とか「食べ物を粗末にしない」って教わりましたよね。ゴミだって、「ポイ捨てしちゃダメ」って習っているはず。もう一度そういうことを思い出して、「飲みきれる量を買う、そしてゴミはきちんと捨てる!」という基本を思い出してほしい。

――タピオカをはじめ、いろいろなゴミが集積所に放置されているようですが、そこは地域住民のゴミ捨て場であり、公共のゴミ箱ではないですもんね。

滝沢 そうです。通りすがりの集積所に放置することは、ゴミに責任を持っていない証拠。「誰かが片付けてくれる」と思っているのかもしれませんが、結果的に街を汚していますし、街をゴミ箱として扱っているのと同じですよね。例えば、引っ越しで大量にゴミを捨てる時なんか、普段はきちんと分別する人でも、可燃ゴミに中身が残ったラー油の瓶を捨ててしまうので、人間の本性が顕著に出ているなと感じます。近所の人や管理人の目がなくなった途端、無責任になってしまうのでしょう。

ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本/滝沢秀一
タピオカブームが一刻も早く去ることを願っています……
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