インタビュー

撤去された「平和の少女像」を展示――丸木美術館学芸員が語る、表現の自由と「慰安婦」問題

2019/08/10 20:30
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

撤去された「平和の少女像」展示――ほかの作家から拒否反応が

 まず、岡村氏は、東京都美術館の展覧会から撤去された「平和の少女像」を、丸木美術館で展示に至った経緯について、次のように説明してくれた。

「JAALAから丸木美術館に『東京都美術館から撤去されたのですが、展示してもらえないでしょうか』という話があり、『今日の反核反戦展2012』に展示することになりました。同展は、アンデパンダン展……つまり『反核反戦』の趣旨に賛同する者であれば、誰でも展示ができる展覧会なので、ほかの作家の作品同様に受け入れたということです。恐らく、JAALAが連絡をしたのは丸木美術館だけだったと思います。JAALAの作家の方々が同展に出品されている背景もあり、受け入れ先として思いつくのが丸木美術館だったのでしょう」

 丸木美術館は正式名称「原爆の図丸木美術館」。1967年に開館し、丸木位里氏、丸木俊氏夫妻による「原爆の図」連作が展示されていることで広く知られ、「『平和の少女像』に限らず、ほかでは展示が難しいという作品が持ち込まれることはよくある」そうだ。では『反核反戦展』の来場者からは、どのような反響があったのだろうか。

「7年前なので、記憶があいまいな部分もありますが、目立った反響はなかったです。ブロンズ製のミニチュア版だったため、作品自体に気づかず、通りすぎる来場者の方も多かったと思います。気づく人だけが気づく作品だったのではないでしょうか。我々も、『政治的意見を主張する作品』と強調するつもりはなく、とりわけそのような説明もしませんでしたし……『大きな騒動にならないように配慮した』とも“言えなくはない”です。とはいえ私は『平和の少女像』を、必ずしも『政治的意見を主張するだけの作品』とは思っていません」

 ただ、『反核反戦展』の出品作家から、「ああいった政治色の強い作品を展示すのであれば、私はもう出品しない」と拒否反応があったことは強く記憶しているという。その作家は、実際に翌年から同展への出品をやめたそうだが、「それもまた作家の自由」と岡村氏は言う。

「しかし、ほかの方から『出品しない』との声が出たからと言って、『平和の少女像』の出品を取り下げることはありません。無審査で誰でも出品できるというアンデパンダン展の趣旨は大事にしなければいけないと思いました」

《原爆の図》のある美術館
隣に座ってみたとき、どんな感情がわき上がるのかを知りたい
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