【特集】「慰安婦」問題を考える第3回

戦地であったがゆえの凄惨な性暴力とコミュニティからの孤立――日本軍による中国人性被害者の知られざる実態

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『太陽がほしい 劇場版』の班忠義監督

 第1回、第2回で述べたように、ひとくくりに「慰安婦」といえども、彼女たちの国籍や、慰安婦となった場所で被害のあり方は大きく異なる。中でも中国は戦地ということもあり、軍が管理した慰安所に留め置かれた「従軍慰安婦」に加え、戦場レイプの被害者、前線の日本軍部隊が作った即席の“慰安所”に監禁された女性など、さまざまな性暴力の被害者を生み出した。一部の被害女性たちは日本政府の謝罪と賠償を求めて裁判を起こしたが、中国政府は1972年の日中共同声明で日本政府への賠償請求権を破棄。それを理由に日本の司法は被害女性たちの訴えをすべて却下した。

 韓国人「慰安婦」同様に、戦後から1990年代まで長らく沈黙を強いられてきた中国人被害者たち。住んでいた土地を追われたり、精神的なトラウマに苦しんだりと、深刻な性被害は「その後」の人生にも影を落とし続けた。体調が悪化すれば病院に連れて行くなど、常に彼女たちに寄り添い、支援を続けながら被害証言を集めた班忠義氏が監督を務める映画『太陽がほしい 劇場版』が現在、東京・大阪・愛知で上映中だ。同作に登場した被害女性や加害を告白した日本軍兵士は高齢のため亡くなった人が多く、それと入れ替わるように、日本では「南京虐殺はなかった」「『慰安婦』は性奴隷ではなく売春婦だ」などと過去を歪曲する動きが見過ごせないほどの勢力を得ている。戦争を知らぬ世代は、今後どうやって歴史と向き合うべきか? 班氏に話を聞いた。

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――韓国では名乗り出以降、年々、元「慰安婦」への関心や支援の動きが高まっていますが、中国では元「慰安婦」はどう扱われているのでしょうか?

班忠義監督(以下、班監督) 「慰安婦」という言葉自体が、まだ正しく理解されていないですね。私が調査した中国籍の女性80人のうち、慰安所にいた経験を持ち、自ら「慰安婦」を名乗る女性は2~3人ほどでした。ほかの方は、戦地での性暴力被害者です。中国人は、慰安所にいた「慰安婦」については、敵国(日本)側の人間だと思っていますね。中国は戦後、言論統制が敷かれ、「慰安婦」に関する調査が進んでいない。そのため彼女たちがどんな仕打ちを受けてきたのか、その被害がまったく知られていないのです。また農村部などの戦地で監禁された被害者から見れば、「私たちと『慰安婦』はまったく違う」「私たちはお金(「慰安婦」が兵士からもらっていた軍票)ももらってないし、食事もろくに与えてもらえなかった」という主張になる。このような分断は、戦闘地域ならではのパターンですよ。

――映画では、抗日勢力とのゲリラ戦地だった山西省の女性たちが多く登場します。彼女たちは、日本軍に拉致・レイプされたり、自宅に押し入ってきた日本軍や傀儡軍兵士にレイプされたりと、部隊が自分たちで作った「即席慰安所」の被害者ですね。彼女たちへの目はどうでしょうか?

班監督 彼女たちの多くは、抗日兵士の妻や娘たちでした。ゲリラ戦で多くの犠牲者を出し、僻地を長期にわたって占領する日本軍にとって、彼女たちは敵対国の人間であるだけでなく、仲間の兵士たちを死に追いやった存在でもある。このような二重の憎しみが、凄惨な暴力となって表れています。それが慰安所の「慰安婦」とは違うところです。とはいえ、性被害という点においては、それぞれに悲惨な状況があり、区別や軽重をつけられるものではありません。ただ、あえて違いを挙げるとすれば、慰安所にいた朝鮮半島の女性たちは植民地支配下で常に差別を受けてはいたが、日本兵にとっては“同族”であったのに対し、中国の現地女性たちは敵であり、日本兵たちが憎しみの気持ちを抱いていただろうという点でしょうか。

 一党支配の中国においては、常に党の「利益」が中心に考えられます。現在の日中関係において、「慰安婦」問題は利益につながらないと考えられているため、中国政府も長らく放置しているのだと思います。私が「慰安婦」問題に関心を持つようになったのは、映画にも登場した万愛花さんの存在を知ったのがきっかけです。彼女が92年に「日本の戦後補償に関する国際公聴会」に登壇した際、被害を訴えるうちに、失神してしまった。彼女の話を聞いたときも、私自身そんなことがあるのかと信じられなかった。そのぐらい中国では知られていない。当時、中国にも支援するような市民組織が生まれていたが、当局の監視の下で自由に活動できないので、結局、被害女性たちは日本の民間人からの支援を受け、裁判などを行ったのです。

太陽がほしい 「慰安婦」とよばれた中国女 / 班 忠義 著
被害者が分断されるという事実を受け止めねば

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