高橋ユキ【悪女の履歴書】

「私は彼の奥様だから」堅実な銀行OLが2億円貢いだ“結婚”という甘言【足利銀行2億円横領事件・後編】

 昭和48年、お盆直前の8月12日に銀行員の大竹章子(21)は地元栃木の小山駅で同僚の女友達と待ち合わせた。少し早く取れた休みを利用して東北に行こうと、前から計画していたのだ。仙台行きの急行「松島4号」に乗り込むと、通路を挟んで隣に座っていた男に話しかけられた。章子は、石村と名乗るこの男のことを運命と思ったことだろう。しかし、この出会いは終わりの始まりだったのである。

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Photo by hiroaki maeda from Flickr

結婚には「秘密警察組織を抜ける金が必要」

「48年8月30日木曜日
 石村さんから電話がある。日光の金谷ホテルで彼と待ち合わせる。203号室。部屋の中には石村さんのアタッシェケースが1つだけ置いてあった。来年の春ごろには結婚できそうだと言う。私を迎えるまでには、何とかして仕事を軌道に乗せておきたいと言ってくれた。本当に嬉しい。みんなにお姉さんと言われながらも長い間辛抱していてきた甲斐があった。
 彼が私の全て。私は世界一幸福な女ね。今日は遅くなったので駅からタクシーを奮発して帰る。」

 来年の春ごろには結婚できる、辛抱してきてよかった、と幸せにつづる章子。しかし、石村にはこの当時結婚しており、東京に妻がいた。

 石村と名乗る男――「安田(仮名)」は、章子が生まれる2年前、宮城県登米郡登米町で誕生した。父は下駄屋で同町の名士でもあり、のちに電子工業の工場長に迎えられた。安田は県立登米高校を卒業後、東京の立正大学に進学したが、ちょうどその頃、父親の事業が失敗し、一家も関東に移り住んだ。安田は学業もそこそこに競輪、競馬通いを続け、大学2年で中退。千葉の自衛隊に入隊したが、競馬場にほど近い船橋市の蕎麦屋に強盗に入り、逮捕される。執行猶予判決を受けた後、東京に出てきていた。妻とは、熱烈な恋愛結婚だったという。

 だが安田が独身で、国際秘密警察の任務についている者だと疑わなかった彼女は、「組織から抜けるために金が必要」という求めに応じて、金を渡し続けた。自分の預金が底をつくと、父親名義の通帳から50万円、100万円と金を引き出し、安田に渡す。だが安田はまだ欲しがった。

「実は、組織から離れるためにはどうしても5000万円位のお金がいるんだ」
「5000万円なんて……」
「君は銀行の貸付係だろう」

 安田にヒントを与えられた章子は、ついに銀行の金に手をつけはじめる。勤務中、章子は隙を見て、窓口隣に座る調査役の検印を白地の手形、伝票、副伝票に押し、それをハンドバッグに入れて持ち帰り、自宅で金額を書き込んだ上、後日、銀行の忙しい時をねらって現金化した。それも“結婚”を夢見ていたからこその行動だった。

昭和の結婚
21歳でそこまで結婚に追い詰められる時代って……

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