[女性誌速攻レビュー]「ar」7月号

「ar」SEXY特集が迷走! 「自分ウケ」と「男ウケ」で揺れる女子に、坂口健太郎が救いの一言

2019/06/30 16:00
島本有紀子

「そこにストーリーがあるから(31歳・出版)」

 続いては、総勢50名の男性に「色気を感じる服」をアンケート調査したというファッション企画「命中SEXYしか欲しくない!」。初対面で落とす「初対面SEXY」、付き合う前のデートで落とす「デートSEXY」、男友達を落とす「昇格SEXY」、マンネリ打破の「惚れなおしSEXY」の、それぞれのコーデが紹介されています。

 例えば、「『オンナを武器にしてます』的な、あからさまな肌見せは苦手、との声多数」とのアンケート結果を分析し、「見せるより隠してほしい。“その先”を感じたい。そこにストーリーがあるから。(31歳・出版)」という、なんだかスカした男性の謎意見を取り上げ、3つのコーディネートを紹介しているのですが、袖ありの服は1着のみで、ほか2着はがっつりノースリーブで肌見せしています。「これくらい、ただのファッションなんだわ。勘違いして武器呼ばわりすんなや。勝手にストーリー感じんなや」と男どもに釘を刺す、「ar」の心意気と受け取りました。

 その他、「スカートはくならロンスカ」「がさっと大きなバッグはムードがない」「スニーカーはローテクデザインで女子力は死守」等、それぞれの男性による勝手な理想を反映したアドバイスが散りばめられていました。“ハイテクスニーカー=女子力低い”説は、「#KuToo論争」にも通じてきそうです。夏はSEXYにハジけたい「ar」読者と男性陣の距離を感じる内容でした。

一部、坂口健太郎のせいだ

 続いてのファッション企画「この夏、私はカジュエロで生きる!」。「デニムをエロく」「ワークパンツをエロく」「ショートパンツをエロく」「シャツをエロく」「ボタニカルをエロく」「ボーダーをエロく」「アニマルをエロく」……と、とにかくあらゆるカジュアルなアイテムをエロく着こなす術を教えてくれています。

 「スウェットをエロく」では、赤いダボダボの長袖スウェットに太もも丈のレギンス(というより昔ながらのスパッツ)を合わせたコーデに「燃えるような赤にそぐわない華奢さ。そのアンバランスが男心に刺さる」との説明が。「Tシャツをエロく」では、グラフィックTシャツにロンスカというフツーなコーデを紹介し、「スニーカーをおともに散歩にいこー」とのコメントが書かれています。読み進めるほどに、エロとは何なのか、どんどんわからなくなる仕様になっています。

 今月号は夏に浮かれつつも、「男性ウケ」を意識して「カジュアルなエロ」を求め、その結果何がSEXYで何がエロなのか、よくわからなくなってしまった印象です。

 最後は結局、坂口のインタビューに救われます。「女性の“あざとい”って、きっと好きな相手によく見られたいと考えているわけで(中略)。そういう気持ちって可愛いなと思います」。

 自分の好きなファッションを自由に楽しみたいのに異性ウケも気にして、今月号の「ar」のように迷走してしまうこと、「ar」読者世代には結構あると思います。そういう時って、「ファッションが好きなのに異性ウケなんて気にしちゃってる自分」が恥ずかしくて、すごく嫌になる瞬間も……。そんな時に「好きな相手によく見られたいと考えている、そういう気持ちって可愛い」と肯定してもらえると、肩の力が抜けて楽になれるのではという気がします。

 坂口の「そういう気持ちって可愛い」という言葉で、夏のファッションを楽しめる女子がまた増えたのかも。そう考えれば、夏がアツいのは、「(全部とは言わないまでも)坂口健太郎のせい」とも言えるかもしれません。
(島本有紀子)

最終更新:2019/06/30 16:00
ar (アール) 2019年 07月号 [雑誌]
「そこにストーリーがあるから(31歳・出版)」は口に出したいフレーズ
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