【連載】ホス狂いのオンナたち

ホストクラブ「300万円偽札事件」勃発――歌舞伎町を震撼させた“未解決事件”に思うこと

2019/06/08 19:00
せりな

偽札まで使っても担当に会いたかった女の子

 くだんのホストは当初、「頑張ったのに、お店に裏切られた」とお店を辞めることをTwitter上でほのめかしていた。この行動は、以前に紹介したホス狂いによる「暴露」とよく似ている。担当ホストに不満を溜めたホス狂いが、関係を切ろうとする際、二人の交際歴やベッド写真などをばら撒く「暴露」と同一の構造を有していると申し上げていいだろう。「客とホスト」の間には境界があるように見えて、実は二人は同じ立場にいる。そう、どちらも、ホスト業界においては「お客様」という立場だ。

 しつこく資本主義の比喩で説明すると、ホストも客も「労働者」にすぎず、真に資本家の位置にいるのは、「店」だけなのである。

 ということで、ついひと月ほど前までは、ホス狂いたちの間では、「偽札事件」はホットなトピックだった。しかし歌舞伎町では、ショッキングなニュースが日夜、製造されている。

 1カ月前のことなど、大過去である。その証拠に、つい最近も、筆者の家の近所でホストがお客に刺されていた。彼らはともに、歌舞伎町の住人である。もはや、偽札事件の話をしているホス狂いは一人もいない。いや、一人いた。私である。

 私にとって、痴話喧嘩の果ての「刃傷」沙汰より、偽札を使ってまで担当に会いたいと思った「人情」に惹かれる。ちなみに、どちらも読み方は、「にんじょう」だ。

 ただの紙で作った札束で会計ができるわけがない。それが通じるのは、おままごとか、子ども銀行の世界だけだ。

 そんなことは、きっと女の子だってわかっている――。それでも見たかった夢があったのだろう。もしかすると彼女には、本当に諭吉の大群に見えていたのかもしれない。真相はわからない。わかる必要もない。

せりな
新宿・歌舞伎町の元風俗嬢ライター。『マツコが日本の風俗を紐解く』(日本テレビ系)で、 現役時代のプレイ動画を「徹底した商業主義に支配された風俗嬢」 と勝手に流されたが、 ホストに貢いでいたのであながち間違いではない。その他、デリヘル経営に携わるなど、業界では知られた存在。 現在も夜な夜な歌舞伎町の飲み屋に出没している。
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最終更新:2019/10/24 18:44
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