『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』“平成の駆け込み寺”住職とヤンキー二人の交流「おじさん、ありがとう ~ショウとタクマと熱血和尚~」

子ども相手の支援は「片思い」のようだ

 恩は継承されることもあるが、一方で子ども相手のことはしみじみ「片思い」なのだとも思う。表情の乏しい今どきのヤンキー、ショウは先述の暴行事件のほかにも家出もして、寺は人員総出で気温5度の街中を探し回った。方々に迷惑をかけつつ成長したショウが、初めて住職に見せた意思表示は、「1日でもいいんで(家に)帰りたいです!」とういうものだった。寺で生きる元気を取り戻したら、家に戻りたいのだ。

 ショウに比べればかなり義理堅そうに見えるタクマでも、事情はあったのかもしれないが、寺を出てから11年間顔を見せなかった。つくづく子ども相手の支援というのは「片思い」であり、巣立ってよかったと笑顔で送れる気持ちがないと難しいのだろう。神様のような仕事だ。

大人という役割をまっとうすること

 住職は、タクマが学校に着ていく「天上天下」の刺繍入り“改造学ラン”も咎めず笑い飛ばすし、子どもたちの抱える問題から逃げることなく、相手にも「逃げるな」と訴えかける。“男らしさ”や“昭和イズム”を感じる言動だ。

 「昭和の男らしさ」というと、近年はパワハラだ、セクハラだ、モラハラだ、それにより女子供は抑圧されてきたのだと「古の悪しき風習」として語られがちだ。それは事実だと思うが、一方その「男らしさ」には、今は失われつつある「いい面」もあったのだろう。昨今は「面倒ごとは避けたい」「コスパ重視」「誰だって苦しさを抱えている」といった風潮であり 、「たじろいでしまうようなことも笑い飛ばす豪快さ」「面倒ごとを引き受ける度量」「みんなの苦しさまで背負う責任感」というものへの価値や評価は下がりつつある。正直になったともいえるが、カッコつけなくなってきているのだろう。

 住職は12年に肺がんが発覚し、のちに脳に転移、最期の数年は立つことも会話もおぼつかず、69歳という若さで世を去った。映像では、いつもくわえ煙草でチェーンスモーカーだったことがしのばれる。肺がんはそのせいもあったのだろうかと思うと複雑だ。しかし、この完全禁煙が進む令和において、住職が煙草を吸う姿からは「昭和の男らしさ」や「カッコよさ」も感じる。

 くわえ煙草の住職の姿を見て思い出したのが、忌野清志郎がいたRCサクセションの曲「ぼくの好きな先生」だ。生徒の目線から、くわえ煙草のおじさん美術教師がイカしていると歌っていて、「恋愛」や「自分のこと」がテーマになる歌が多い中で「敬愛」をテーマにした美しい歌だ。このおじさん先生は職員室が苦手で美術室にいつもおり、住職のような昭和の男らしさ的要素をあまり感じない人なのだが、どこか住職と共通する父性のようなものを感じる。それは子どもに対するスタンスだ。子どもと一緒にはしゃいだりせず、おじさんとして、大人として子どもに接している。大人という役割を背負っているのだ。

 思春期の子どもにとって、親でないが父性を感じさせ、子どもを子どもとして大切に扱ってくれる、尊敬できる「好きなおじさん」がいることはとても豊かなことであり、支えになるのではないだろうか。そして、そんな「おじさん」の存在は子どもだけでなく大人にとっても「大人の役割」をまっとうすることの尊さを教えてくれる。しかし、そんな面倒な仕事を引き受けてくれる「おじさん」が今、どのくらいいるのだろうかとも思う。

 次回のザ・ノンフィクションは「それでも私は生きてゆく」。8年前に有効な治療法がない難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した37歳の美怜。手足はおろか、顔の筋肉まで動かせなくなった美怜が「幸せの瞬間」を求め生きる日々を追う。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

最終更新:2019/06/20 12:33
昭和の男 半藤 一利
ご冥福をおいのりします

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