介護現場のハラスメント問題【前編】

介護職が明かす「パワハラ」「セクハラ」問題の今、「高齢者にも性欲を感じる権利がある」が……

2019/06/14 17:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

「自分の身は自分で守るしかない」Oさん

50代女性。訪問介護ヘルパーを経て、有料老人ホーム勤務

 訪問介護の利用者さんはほとんど女性だったので、セクハラは記憶にありません。パワハラはありました。でも「あんたなんか頼んだ覚えはない」などと言われるのは、認知症の症状の一つでもあるんです。新しく訪問介護に入った私の仕事ぶりをご家族が見張っていたこともあって、利用者さんは「こっちは金を払っているんだ」という意識が強いですね。

 そういう意識は、有料老人ホームでも強いです。介護職がちゃんと仕事をしているか、虐待をしていないか、チェックするために、監視カメラを部屋につけているご家族も少なくありません。いい気持ちではありませんが、同僚も「やましいことがないんだから、堂々として、見てもらえばいい」と言っています。

 でも、ハラスメントに関しては、特に有料老人ホームだと運営側が満床にしておきたいので、お客さまに「出て行って」とは言えません。お客さまへの接遇の方が重視されています。だから、介護職が自分で身を守るしかありません。研修でパワハラ、セクハラについて講義を受けることはありますが、対策をするとか、お客さまに向けて注意書きを貼ったり配ったりするということもないですね。介護職同士で話し合って、こうしようと対策を共有するくらいです。新人がやられることが多いと、男性が入るようにするとか。会社としての対策はありません。お客さまに自室でAVを流されたり、暴言、暴力を振るわれることも多いですが、これもかわすしかありません。お客さまを叱ることもないですし、何かを言ったとしても「こうしてください」程度で、きつい言い方はしません。それにもし叩いたりすると、高齢者はすぐにあざができるので、わかってしまうんです。あまりにもコールが頻繁だと、コールを外すことがあるくらいですね。

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