『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』「今のままでいい」バツイチ・子持ちのアヤ(38)の婚活「男と女の婚活クルーズ 2019」

2019/05/21 14:34
石徹白未亜

「好きになりたい」なら恋活すればいいとも思うが……

 「好きになりたい」アヤだが、それなら婚活ではなくマッチングアプリなどを使い恋活すればいいのではと思う。しかし番組の最後にアヤは、「(恋に)燃えると子どもを置き去りにするから、今はゆっくりでいい」とも言っている。
 
 結局、アヤは「結婚したい」でも「燃え上がるような恋がしたい」でもなく「別に今のままでいい」のだ。なんなんだ、という脱力感の中で「サンサーラ(番組エンディングテーマ)」を聞いた。

 私はテレビのお見合い番組や婚活関連の番組を見るのが大好きで、過去には中高年向け結婚情報サービス「茜会」エグゼクティブ男性の結婚相談所「誠心」の両事業者に取材させていただいたこともある。そんなイチ婚活ファンとして、アヤのような覚悟の決まらない人間が婚活をしたら、覚悟を決めて大枚をはたいている相手に失礼だとも思うが、アヤとて「クルーズに出てみて、やっぱりそんな結婚したくないとわかった」というのはあるのかもしれない。視聴している側には、アヤが最初から結婚に乗り気でないように見えたが、自分のことは案外わからないものだ。それとも、美人のアヤにとって、婚活クルーズに参加したのは「栄光よ、もう一度」的気持ちもあったのだろうか。

 38歳のアヤにアプローチをかけた男性3人のうち、一人は46歳、残りの二人は50代で、最終的にアヤに告白したのも、この46歳と50代だった。アヤと同世代の男性は、アヤより下の世代に行き、こういう点において婚活はわかりやすくシビアだ。なまじ美人ほどかつていい思いをしただけ、こういったギャップはきついだろうとも思う。

アヤにはなく、真の主役・サヨにあるもの

 実は、今作の主役はアヤではなかったように思う。真の主役は、ちらっとしか出てこなかったクルーズ参加者の看護師・サヨではないだろうか。最終日の告白タイムにおいて、通常は男性から告白するが、女性から告白したい人はいるかという司会者の問いかけにサヨは手を挙げる。

 そして相手に対し「初日からいろいろな話をして将来のことも話した。これからも歩んでいけたら」「結婚を前提にお付き合いさせていただきたい」と痺れるような告白をする。相手は感動の上、快諾していた。

 一方アヤはその日の朝、食事を一緒に食べた男性の口元にケチャップがついているのをナプキンで拭ってあげる「モテテク」を披露し、男性はその後アヤに告白し玉砕していた。「好きにならないとダメ」なくせに、好きでもない相手にそんなことをする。覚悟の決まったサヨを前に、しみじみとアヤは「婚活」向きではない。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は「黄昏れてフィリピン ~借金から逃れた脱出老人」。アヤの煮え切らなさが可愛く思えてくるような一本だ。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

最終更新:2019/06/20 12:35
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