【連載】スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコの“教祖様”注意報

スピリチュアルにハマった妹は自殺未遂を犯した――信じる心が“狂気”になる可能性【後編】

2019/05/15 21:00
黒猫ドラネコ

 誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

 3年ほど前、私の妹は、“子宮委員長はる”と、心理カウンセラー・心屋仁之助氏に心酔していました。「好きなことだけして生きていく」「いい人をやめてスッキリする」という彼らの教えに従って、妹は育児を放棄し、当時勤めていた会社を突然退職。そうこうするうち、妹の夫から「もう限界」とSOSが……。私は妹をなんとか目覚めさせようと、妹の夫も含めた3人で、家族会議を開きました。

(前編はこちら)

妹は“教祖様”になる寸前だった

 そこで出た話によると、妹は子宮委員長らのセミナーに通うたびに、「布ナプキン」「パワーストーン」「メモリーオイル(油の入ったミニ香水瓶)」などのグッズを購入していて、その数は増えていくばかりだったそう。物欲のままに買ったブランド物のバッグや洋服なども含め、これまでの浪費は数百万円まで膨れ上がっていました。妹のお財布から出たお金ならいいですが、もちろんそんなはずはなく、夫婦の貯金や、日々の生活費まで消えていました。

 さらに妹は、タロットカードなどを用いた別のスピリチュアル系講師になるため、毎月数万円を支払って「認定講師講座」に通っていることが発覚。新しくブログを開設し、参加費5,000円の“お茶会”を開こうと参加者募集をかけていたところで、もはや新たな“教祖様”となるのも時間の問題……という状況だったのです。

 私は、金遣いの荒さや育児放棄について妹を追及しましたが、彼女は「何が悪いの?」と笑うだけ。しかし、子宮委員長はるの奔放な生き方や、心屋氏の「迷惑をかけていい」といった思想について指摘すると、途端にヒステリーを起こし、「子宮の声を聞いて、自分がやりたいようにして、幸せになった人もたくさんいる! 宗教なんかじゃないのに!」と私たちを怒鳴りつけました。

 高圧的な態度の妹に対し、夫である義弟は極めて冷静。離婚届を妹の目の前に出し、「身勝手を繰り返して開き直る君を、もう受け止められない。このままではどちらにせよ子どもに影響が及ぶので、離婚するか、考えを改めるか選んでくれ」と告げました。いつも穏やかな義弟のその言葉には、強い“怒り”がにじんでいたように思います。

 夫と子どものことも、“子宮系”の教えも捨てられない妹は、離婚を告げられたことで激昂し、ついに「もう私、死んでいい!? なんでこんなに責められるの!」と言って、ベランダに飛び出して柵に足をかけました。ここはマンションの5階。飛び降りれば、命を落とす可能性も……。義弟は泣き叫んで暴れる妹を抱えて部屋に押し戻し、その間に私は、家にあった包丁やハサミなどの刃物類を、すべて見えないところに隠しました。パニック状態の妹は、「死なないから1人にして!」という叫びを残し、ついに玄関から逃走。LINEは既読になるものの返信はなく、そのまま2日間ほど消息を絶ちました。

人はなぜ、宗教にハマるのか?
「平穏な暮らし」って当たり前じゃないんだな……
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