インタビュー

娘と性交した父親が無罪――性暴力サバイバーが「つらいし、悲しいし、おかしい」事件と判決を語る

2019/04/29 17:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

加害者の責任を追及していくような流れを求める

――今回の判決に対しては、世間から「おかしい」という声が多数上がっています。

山本 やはり、誰が見てもおかしい。今回の判決はそれがとてもわかりやすかったのではないかと思いました。被害者女性にとっては、裁判所には否定されけれど、世間がこうして声を上げてくれたことは、よかったと思います。こうしたことが許される世の中だったら、また同様の事件が起きてしまうかもしれず、それは彼女にとって、とても怖いことなのではないでしょうか。被害者の落ち度ではなく、加害者の責任を追及していくような流れになっていってほしいと思います。

 福岡・久留米で、テキーラの一気飲みによって意識がもうろうとなっていた女性を強姦した被告に、無罪判決が出た際も、「おかしい」という声が上がっていたので、性犯罪に対する世の中の意識が変わってきたのではないかとも思いますね。

――この「おかしい」という気持ちを、我々はどういったアクションにつなげていけばよいのでしょうか。

山本 Twitterなどで、事件や裁判のニュースをリツイートする、「おかしい」という意見を投稿することは非常に大切だと思います。また、私が代表理事をしている「一般社団法人Spring」では、20年の刑法見直しに向けて全国キャンペーンを行っています。法務省はまだ「見直しをする」と決定しているわけではないので、全国各地でイベントを行い、参加者の方に刑法見直しに関して話をしています。そこで、おかしい現状に対する「声」を集める「One Voice キャンペーン」を行い、それらをシートにまとめて、国会議員会館でイベントをして可視化しようと考えていて、あわせて署名活動も行う予定です。今回の判決に対して「おかしい」と感じた人は、ぜひ刑法性犯罪について調べたり、こうした活動に参加してほしいと思います。

山本潤(やまもと・じゅん)
1974年生まれ。看護師・保健師。性被害当事者が生きやすい社会の実現を目指す当事者を中心とした団体「一般社団法人Spring」の代表理事。13歳から20歳の7年間、父親から性暴力を受けたサバイバー、性暴力被害者支援看護師(SANE)として、その養成にも携わる。著書に『13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル』(朝日新聞出版)。
一般社団法人Spring公式サイト

最終更新:2019/04/29 17:00
13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル/山本潤
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