老いゆく親と、どう向き合う?【1回】

明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心【老いゆく親と向き合う】

 あえて言おう。「ピンピンコロリ」は幻想だ。シリーズを始めるにあたって、まずはこの文を読んでほしい。

【大方の高齢者は、70代までは元気であっても、晩年期の80代、90代の老いの坂を「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける「ピンピン・ヨロヨロ・ドタリ」の高齢期を生きる時代になっている】――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 平均寿命が延びて、人生100年時代になろうとも、人間は必ず老い衰えていく。「ピンピンコロリ」が叶うのは“少数の幸運な人だけ”(前掲書)なのだ。そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか――“終活”ならぬ“終末”ライター・坂口鈴香が、さまざまな家族の姿から考えます。

明るく聡明な母を尊敬していた

 岩崎武志さん(仮名・54)は大手企業の管理職だ。東京近郊で妻、娘と暮らしている。妻の実家は歩いて5分ほどの“スープの冷めない距離“にある。妻の両親も健在で、妻や娘は頻繁に行き来しており、平日は遅くまで仕事、週末はゴルフで忙しい岩崎さんにとっては、安心できる環境だと思っている。

 北海道出身の岩崎さんは、大学入学時に実家を出て以来ずっと首都圏で暮らしてきた。父親は早くに亡くなった。80代の母親は北海道の実家で一人暮らしをしているが、今のところ足腰もしっかりしているし、社交的な性格で友人や親せきも周りにたくさんいる。それに、姉が実家から車で15分ほどの場所に住んでいるので何かあっても安心とばかりに、岩崎さんは年に1回帰省する程度で済ませていた。とはいえ、妻や娘も「明るく聡明なおばあちゃん」のことを慕っており、電話でよく会話もしていた。

「離れて暮らしていることもあるのでしょうが、妻は母から嫌な思いをさせられたことは一度もないと言っていて、関係は良好。私もしっかり者の母を誇りに思っていました」

 こんなエピソードもある。岩崎さんの一人娘は、高校入学後まもなく登校できなくなった。望んでいた高校ではなかったこと、親の期待に応えられなかったことなどから、家から外に出ることができなくなったのだ。岩崎さんも心配したが、妻の心労は人一倍だった。日頃から、孫をかわいがっていた妻の両親はオロオロするばかりで、どう対処したらよいのかわからない。腫れ物に触るような毎日を過ごしていた。

 いらぬ心配をかけまいと、岩崎さんの母には何も伝えていなかったが、その年の暮れに一人で帰省した岩崎さんは事情を打ち明けざるを得なかった。

「なるべく深刻にならないよう伝えたつもりだったんですが、母には娘のつらさや妻の憔悴がわかったんだと思います。母は『今は本人が居場所を探しているとき。自分で見つけ出すことができるまで、周りは静かに見守るしかないね』と言ってくれました」

 暗闇に光が差し込むように感じた。岩崎さんは、妻にも母の言葉を伝え、娘を信じて見守ることにしたのだ。

 そして1年ほどたつと、娘は自ら高校を中退。フリースクールに通いながら大検を受け、今は希望の大学に楽しそうに通っている。

「正直なところ、私たちが望んでいたような大学ではありませんでしたが、娘の選択を尊重することができているのは、母の言葉があったからです。改めて母を見直しました」

新品本/百まで生きる覚悟 超長寿時代の「身じまい」の作法 春日キスヨ/著
親の老いと向き合うのは悲しいけど、逃げたくないね

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