インタビュー

瀬地山角氏に聞く、「SPA!」ヤレる女子大学生記事の炎上と「東大生の性犯罪問題」の背景

2019/04/15 20:15
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

「高校の家庭科の先生になってみたい」

――大きな質問になりますが、性犯罪をなくすためにはどうすればいいのでしょうか。また、その背景にあるジェンダー問題にどう取り組むべきか、ご意見をお聞きしたいです。

瀬地山 問題が大きすぎて、どう答えてよいのかわかりませんが、私は、高校で教えるとしたら家庭科の先生になってみたいと思っているんです。現在、性教育は中学高校の保健体育の時間で教えていますが、本来は家庭科で教えるべきだと考えています。私はこれまで20校くらいの高校に行って講義をしていて、まず「性的同意のないセックス、コンドームを使わないセックスは、女性に対する暴力だ」と教えています。これを明言できる高校の先生がいない。「モーニングアフターピルには、ノルレボとプラノバールがあってノルレボの方が高いけど、ここでは絶対にケチらずに、ノルレボを使え。副作用と避妊の確率が違うから。でもこれは最後の手段で、手前でちゃんと避妊しろ」。「踏み込んだ性教育」なんて言われますが、当たり前の話です。

 それから、望んでいない妊娠をすることが女性の心身とキャリアにとってどれほど恐ろしいことか、男女問わず理解しなくてはいけないと思います。その上で、次のように言います。「女子生徒のみなさんは1億円の当たりくじを持っています。第1子出産後、正社員を続けていればその後30年で1億円が間違いなく手に入ります。会社によっては2億円になるでしょう。当たりくじを現金化するのは男子生徒のみなさんの仕事です。総務省『社会生活基本調査』(16年)では、共働き夫婦が担う家事関連時間(家事に加え介護、看護、育児、買い物を含む)は週平均1日夫が46分に対し、妻は4時間54分。妻が正社員として働き続けられるよう家事を分担すべき。夫と妻の家事時間を足して2で割れば、約3時間。土日を含むので、十分に可能。この男の3時間の家事が女性のフルタイムでの就業を可能にする。女性の年収300万として、生涯で1億円。一日平均3時間なら、年間の男性の家事が約1000時間で、女性が300万稼げば、男性の家事の時給は3,000円となり、男性の残業代より高い。家事育児の分担は男性にとって極めて経済合理的なんです」と。今回、「ヤレる女子大学生RANKING」に大学名を挙げられてしまい、腹を立てている女子学生にも伝えたいです。「みなさんには2億円の価値があるのだ」と、自信を持ってほしいと思っています。
(取材・文=安楽由紀子)

瀬地山角(せちやま・かく)
1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、1994年東京大学助教授。2009年より現職。この間に韓国のソウル大学に留学し、ハーバード大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

最終更新:2019/04/15 20:15
東アジアの家父長制 ジェンダーの比較社会学 / 瀬地山角 〔本〕
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