インタビュー対談【後編】

「高校生は妊娠しちゃダメ」は本当なのか? 性教育の“当たり前”を考え直すことの可能性

2019/03/31 18:30
末吉陽子

西出 博美さん

――幼少期だと、性被害なのかどうかもわからないですよね。

のじま そうですね。皆さん、自分が大人になってから、あれは性被害だったんだと気づいたパターンがほとんどのようです。いま、小学生がSNSで巻き込まれる性被害の数が、過去最高となっており、発覚している被害者の中で、低年齢だと8歳のお子さんもいます。また、男の子のお母さんは、誰かを悲しませる加害者になったらどうしようと悩んでいます。

西出 性教育と防犯を合わせて教えることも大事ですよね。例えば、防犯や防災と組み合わせて教えていくとか、真正面の性教育だと難しくても、もうちょっと違う入り口を探してみるのもいいかもしれませんね。性教育は近い未来と遠い未来、それぞれに影響がある話をする必要があると思っていて、教える側は、段階を踏むことと、「自分はどこを教えているのか」を理解することが必要なんじゃないかなと。

のじま 世界では5歳からの性教育がスタンダードだという認知が広まっている中、日本では「コンドーム」という言葉が性教育で出てくるのが高校です。今のままでいいのだろうかと、親も教員も疑問に思っているけれど、どこまで踏み込んで良いかわからない。ジレンマがありますよね。

西出 私自身の好みかもしれませんが、あまり主張を織り込まず、色をつけない性教育がいいなと思いますね。

――10代の妊娠はリスクと教えられるのが常ですが、法律で明確に出産年齢が決められていない以上、「じゃあいつならいいの?」という疑問はつきまといますよね。もちろん身体的な面からリスクだと伝えることはできると思いますが。

西出 性教育では、当たり前に「高校生は妊娠してはダメ、リスク」と教えられるけど、「高校生の妊娠はリスクなのか??」っていう問いがあり、リスクかどうかは本人が判断したら良いと思っています。逆に、例えば高校生に「いま妊娠したら、妊娠させたらどうなるんだろうね?」という問いを立てて、そこから性の話に降りて考えるのも良いのではないかなと。「結婚はできる? できない? できるならする? しない? 学校はどうする?」と考えさせるように、教えていくんです。そして、実際にそうなったとき、「考えた結果、子どもを持ちたい」ということなら、その判断をするのは本人と家族がすればいいと思います。

のじま 私は「10代では産まなくて良い」と思っている側の人間です。10代でしかできない経験があるのと、10代の離婚率は9割と高くて体の負担も大きい。人生をショートカットせずに、子どもを持つ前に自分自身と向き合うことが大事だと思います。若年層の妊娠出産の支援がもっと充実してもいいと思いますが、社会を変えるのは時間が掛かると思います。

西出 そうですね。ただ私としては、いまは高校生で妊娠すると、退学になる学校が多いですが、それはおかしいと感じます。復学しやすい環境をすぐに整えるべきではないでしょうか。本人の意思で勉強し直すことができる、寛容な社会になったらいいなと思います。

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