インタビュー対談【前編】

「出産動画に恐怖」「教科書を音読するだけ」日本の性教育は、どのように“遅れている”のか?

2019/03/30 19:00
末吉陽子

――確かに、「性」にはセックスや妊娠出産だけではなく、もっと手前の恋愛やジャンダーなども含まれますよね。

のじま 我が家では、子どもたちに、どんどん恋しなさいと伝えています。中高生は恋したいじゃないですか。先輩にあこがれて、付き合って、キスをして、たくさん思い出を作っていいと思うんです。でも、自分の体を守る方法は覚えておきなさいと。これは、広く言えば性教育ですが、同時に「あなたたちがいかに大切な存在であるか」を伝えることでもあります。

西出 おっしゃるように、性教育は学校だけに任せるのではなく、学校は学校で教えられることを教えて、家庭やNPOなど、いろんな人たちが協力し合って、子どもに知識を授けていくのがいいんじゃないかなと思います。ただ、平等に知識を学ぶという観点では、公教育にしかできない性教育も、まだまだ可能性があるはずですよね。

のじま 学校と提携している性教育の協会もありますが、いずれにしてもセックスや交尾という性に関するワードは使わないことになっています。生命の誕生の奇跡とか、性の“キラキラしたところ”しか言ってないんですよね。中途半端に学ぶので、結局のところ親に「赤ちゃんってどうやってできるの?」と聞きます。親から納得いく説明がもらえなかったとなると、子どもはインターネットに聞きにいくんです。

――好奇心が高まっても、正しい知識を得られる場所がないとなると、大人への不信感が募ってしまいますよね。

のじま うちの娘もどこで聞いたのか、「処女ってなに?」って聞いてきたことがあるんです。私は看護師なので、仕組みから説明できますが、中途半端に教えるのが一番よくないと思います。例えば、学校で卵子と精子のパネルで妊娠の仕組みを教わった子が、「お父さんとお風呂に入ったから妊娠したかも」と真剣に言い出したケースも耳にしたことがあります。妊娠を目的にした性交渉は膣にペニスを入れて成り立つこと、精子は空気に触れると死んでしまうことなどを体系立てて教えていれば、お風呂で妊娠とかあり得ないことが子どもにもわかるはずです。

――性を科学で捉えて教えることが大事だということですね。

西出 学生時代、保健体育の授業で性教育を教わったとき、教科書に書いてあることを丸々音読しただけで、クラスからはクスクスという笑い声が漏れ、先生も音読して「ハイ終わり」という感じでした。先生も人間ですから、恥ずかしい感情もあるのかもしれませんが、現実と合わなくなってきている教科書の内容を見直して、無味無臭の性の知識を淡々と教える時間がベースにあって、それにプラスして自分の思いを語るといいのではないでしょうか。もっと、生きていくこと、家庭を作ること、暮らしていくこと、生活していくことにちゃんと着地していくような教育を先生たちが意識して、教える内容を考えてもらえるといいのかなと。

のじま その通りだと思います。ただ、公教育を変えるには、20年くらいかかるんです。いまの小中高生が誰かに傷つけられる、正しい知識がないために悲しいことに遭いかねない。だとすれば、まずは地域と家庭を変えていかないといけない。一番は子どもたちに最も近い「家庭」を変えることです。私は、まず発信力のある意識の高いお母さんを変えて、徐々に地域に広げていけるような活動をしていきたいと考えています。

西出 出産後の健診時に絵本をプレゼントする「ブックスタート」という活動をしている団体がありますが、そこに性教育の絵本とか混ざってるといいかもしれませんね。妊娠手帳のように、一家に一冊“人体の不思議”的な本として、全家庭に配られることで知識が向上するきっかけになるんじゃないかなと思います。
(末吉陽子)

(後編につづく)

最終更新:2019/03/30 19:00
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