【連載】ホス狂いのオンナたち

ホストに月200万円使う女は、どんな接客を受けるのか? 究極の接客「本営」の実態

2019/03/23 17:00
せりな

私たちはブランドバックがほしいわけじゃない

 友人アミ(仮名)は、私のSMクラブ時代の同僚で、ほどほどにホスト遊びを楽しむ若い女の子“だった”。いつしか彼女も、ばっちりハマる担当と出会い、いつの間にかホス狂いへの階段をかけ上がっていた。階段の登り方は、これまでの連載で語ってきたので割愛する。興味のある人はぜひバックナンバーを読んでほしい。

 そして、彼女が毎月50万円ほどを使う立派なホス狂いになったとき、あるひとつの「変化」が訪れた。そう、店外デートが増えたのである。字面でだいたいのニュアンスはわかると思うが、一応、定義をしておく。「店外デート」とはホストクラブ以外の場所、例えばディズニーランドなど、店が介在しない場所へ一緒に外出することを指す。

 ホストの接客形態には、ほかにもいくつか種類がある。例えば、「同伴」。店へ行く前に一緒に食事などをともにする営業方法である。あるいは、「アフター」。これは、店の営業終了後、一緒に過ごす営業方法だ。しかしこれは両方とも「お店に行くこと」とセットになっている。とにもかくにも、諭吉を握りしめて、お店に行くことが前提だ。

 しかし、「店外デート」では閉店の鐘は鳴らない。シンデレラの魔法は解けないのである。少なくとも、その日のうちは。ほかのホストも、ほかのお客もいない。二人っきりの時間を過ごすことができるのだ。もっと身もふたもない言い方をすると、ホストのプライベート時間を独占できる。このように、店での接客は前哨戦に過ぎず、「ホストの究極の接客」は、この「店外デート」から本番開始と言っても過言ではない。

 ホス狂い一般論を確認したところで、アミの話に戻ろう。店外デートが増えてしばらくたった頃、アミに次の「変化」が訪れた。「店外デート」が「お泊まり旅行」へとレベルアップしたのだ。もちろん、その頃には担当ホストへ使う金額もレベルアップしている。ちなみに、店外デートや旅行に関しては、ホストが全額払っていたそうだ。

 意外に思う読者も多いかもしれない。しかし、ある優秀なホストはこういっていた。

「客が店に払った金額の10%以上をリターンせよ。それが優秀なホストだ」

 通常、ホストの給料は指名客が使った金額の50%弱である。例えば、客が200万円使ったとすれば、ホストの給料は100万円ということになる。そして、優秀なホストは、200万円のうちの10%――つまり、20万円をお客への旅行やプレゼントに費やす。楽天ポイントよりも、はるかにお得な還元率だ。

 ホストに使うお金があれば、自分で旅行も行けるしプレゼントも買えるのでは。そういう指摘が聞こえてきそ……あーあー聞こえない、聞こえない。私たちは「プレゼントをもらう」という「体験」にお金を払っているのだ。たとえそれが、元は自分のお金であっても。

 ぴんとこない人もいるかもしれないが、要は、こういうことである。私たちは、ブランドバックがほしいんじゃなくて、ブランドバックを好きな人にもらうという体験を味わいたいのだ。だからこそ、旅行に行った次の日に、またホストクラブでシャンパンを開ける。「お金を使ったお礼」の「旅行のお礼」に「店に行く」のだ。ホス狂いにはホス狂いなりの論理があって、彼女たちの筋はしっかりと通っている。まるで永久機関である。

 というか、水商売の世界は、だいたいがこの論理で回っている。「究極の接客」とは、接客を意識させないことに尽きる。お礼、お礼、アンドお礼の世界だ。そして、私はそういう水商売の在り方を好ましく思っている。もちろん、ホス狂いの世界もだ。ここで忘れてはならないのは、ホストもまた水商売の世界の住人であり、その世界のルールを彼らは熟知している。ついでにいえば、ホストはそのルールに自ら進んで乗ろうとするホス狂いの気持ちなど、元より承知の上なのだ。ウォール街の住人も、リターンが期待できなければ、そもそも投資をしない。それと同じことだ。南無三。

『水商売の「お仕事」と「正体」がよ~くわかる本』
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