[官能小説レビュー]

「短小」という強いコンプレックスから男を解放する、SM官能小説『奴隷島』

2019/02/25 19:00
いしいのりえ
『奴隷島』(幻冬舎)

 官能小説界のキラーコンテンツであるSMは、非日常の作中に漂う耽美な世界観で多くの人々を虜にしている。古くは団鬼六、現在では第一線で活躍している官能小説家のほとんどがSMを題材とした作品を発表している。

 では、SMの魅力とはいったい何だろうか? 男と女がただ欲望を貪り合い、恥部や苦痛をも曝け出して究極の快楽を求める――SMというプレイにより体はもちろん、心も裸になることで得られる快感の、その先にあるものとは何なのだろう?

 今回ご紹介するのは草凪優の『奴隷島』(幻冬舎)。奴隷島に辿り着いた主人公の嘉一が滞在する洋館は、まるで古い絵本から飛び出したようだ。重厚で瀟洒な家具が揃えられ、燕尾服を着た老人が、美しい女性に給仕する。

 執事である老人の名は間宮、ベルベッドのドレスに身を包んだ女性は櫻子と言った。溺れていたところを助けられたという嘉一は、窓の外を眺めた。孤島に住んでいるのは彼女たち2人だけだという。

 その夜、嘉一は部屋を抜けてリビングの奥にある部屋へと足を運んだ。何やら人の息遣いを感じたからである。暗闇に刺す一筋の光を頼りに地下室へと足を運ぶと、そこには両手を吊り上げられた、裸同然の姿の櫻子の姿があった。燕尾服姿の間宮は櫻子の乳首をつねりあげ、抵抗できない櫻子を執拗に甚振る――。

 幼い頃、両親に捨てられた嘉一は、老若男女で構成された窃盗団に拾われた。同世代の子どもも数人所属しており、まるで幼馴染のような関係を築きながら窃盗を繰り返し、全国を渡り歩いていた。そんな彼が、ひょんなことから海に投げ出され、この「奴隷島」へと辿り着いたのである。

 櫻子を陵辱する場面を目撃した嘉一、そして、盗み見をしている嘉一に気づいた間宮は、彼を部屋へ招き入れるのであった――。

 私が特に注目したいのが、中盤に描かれている櫻子とのプレイと、嘉一の過去である。初めて自分の体で悦ばせることができた嘉一。彼には短小であるという強いコンプレックスがあった。それを確固たるものにした出来事が、恋人からの一言であった。

 グループから足を洗って堅気の仕事に就こうと決心した嘉一は、恋人に「あなたとのセックスは苦痛だ」と告げられる。結婚を決意するほど愛した恋人からの一言は、嘉一を深く傷つけた。しかし「奴隷島」での彼は、櫻子を快楽の絶頂へ導いたのである――。

 幼い頃から囚われていたトラウマから嘉一を解放したのは、奴隷島でのセックスであった。このように、SM小説では登場人物が主従関係により心が解放される場面がしばしば登場する。

 人は誰しもコンプレックスやトラウマを抱えているものである。そんな自分から脱却したいという想いを叶えてくれるところもSM小説の面白いところではないだろうか?
(いしいのりえ)

最終更新:2019/02/25 19:00
奴隷島 (幻冬舎アウトロー文庫)

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