仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

「オンナ芸人のブスいじり」が消えつつある今、バービーがニューヒロインになりそうな理由

2019/02/21 21:00
仁科友里

バービーの行動は視聴者からのクレームがつきにくい

 男性に対してアグレッシブなのは、今も変わっていないようだ。2月16日放送の『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)に出演したバービーは、ガンバレルーヤ・よしこに「男漁りがひどくて、オンナ芸人の品を下げている」と指摘されていた。バービーはSNSでダイレクトメールを送ってくる一般人とデートをし、会ったその日に“ぺろんちょ”(おそらく性行為の意味)したことがあるらしい。SNSが発達した今、有名人と一般人の間でトラブルがあった場合、リスクが大きいのは知名度高い有名人の方である。そのリスクを考えたのだろう、オトコ芸人は「一般の人でしょ?」と驚き、オンナ芸人は「オンナ芸人がみんなそんなふうに貞操観念が緩いと思われたら、困る」とバービーに抗議した。バービーは「オンナ芸人の人ってどこか自信がないのに、プライドはあるんですよ。もっと素直に愛されよう!」と反論していた。

 会ったその日に“ぺろんちょ”する考えの好き嫌いは別として、バービーの行動は視聴者からのクレームがつきにくいだろう。なぜなら、バービーの行動で傷つく人はいないから。バービーはテレビで彼氏がいると明言していないし、独身である。そのため、性に奔放であっても、誰にも迷惑をかけていないことになる。

 女性がよく知らない人と簡単にセックスするなんてと眉を顰める人もいるだろう。安全上の問題や、セックスを長期的に交際するための駆け引きとして使うという観点で言えば、危険な決断かもしれない。しかし、「女性だから」貞操を守らなければならないと考えているとしたら、それは女性の性的な自由を認めない、もしくは女性は性的な経験が少ない方がいいという女性差別にあたる。なので、クレームがあったとしても、「ちょうどいいブス」ほどの盛り上がりにはならない。

 それにしても、テレビは炎上の理由がいまいちわかっていないと思わされることがある。

 性欲が強いキャラで売っているからだろう。バービーはネタのふりをして、陣内智則にキスをしたり股間に顔をうずめ、突き飛ばされてオチを迎えるネタをたびたび披露する。陣内もバービーも視聴者も、同意の上に行われたネタであることは承知しているだろう。けれど、私に言わせるのなら、これもアウトである。もし男性タレントが女性タレントに同じこと、つまり無断でキスをしたり、股間に顔をうずめたりしたら炎上必至のはずだ。女性に差別をしてはいけないのではなく、女性(男性)にやってはいけないことは、男性(女性)にもやってはいけないのだ。放送の最終決定権を持つテレビ局がそういった根本的な部分を理解していないために、表面上は女性に気を使っているが、炎上要素を含んだネタが繰り返される羽目になっている。

 性犯罪でも毎回女性が悪く言われ、ジェンダー観の過渡期を迎える日本で、性欲の強いキャラは実は立ち回りが難しいポジションだ。そこをうまく切り抜けて、性を謳歌する独身のニューヒロインとなってほしい。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2019/02/21 21:00
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