“中学受験”に見る親と子の姿

「10戦1勝9敗」中学受験で不合格連発……「闇落ち」する親子と「立ち直る」親子の違い

2019/02/10 19:15
鳥居りんこ

お葬式のような顔で合格を受け取った

 A学園には、加奈ちゃんと同じようなパターンを辿った若葉ちゃん(仮名)という子が在籍している。現在、A学園の高校1年生である若葉ちゃんとその母・真純さん(仮名)に先日お会いしたのだが、「確かに2月の中学入試はつらかったです。“絶対確実”って言われていた学校も含めて、一つも合格が取れないので、もう、どこにも受かる気がしなかったですね……」と、本人が当時のことを振り返ってくれた。

 一体、彼女はどう立ち直ったのか。それは、塾の先生からのアドバイスと、A学園の先生からの言葉を、親子ともども「素直に聞いたこと」だったという。

「塾の先生がこう言ってくださったんです。『若葉にとっておきの学校があるぞ!』って。偏差値が本命校より15も低いんですが(笑)。でも、信頼していた先生がすっごく勧めてくださるから、『じゃあ、いいのかな?』って、単純にそう思いました」

 若葉ちゃんが、A学園の合格発表を迎えたのは、奇しくも本命校から2度目の不合格結果をもらった直後だったという。

「あの時、母も私もお葬式のような顔をしていたと思うんですが、A学園の先生が合格書類をくださる時に、本当に慈しむように、私に『ようこそ、よくいらしてくださいましたね』と言ってくれて。母が最初に泣いて、私も泣いて、ふと見たら、その先生も泣いていて(笑)、母に『私はここの学校がいい!』と言ったことを憶えています。あ、今、その先生は私の部活顧問なのですが(笑)」

 一方の真純さんは、「そうだったわね。あの時、ママが先に泣いちゃって、ごめんね(笑)」と微笑んでいたが、若葉ちゃんから「ママが『ここなら若葉を安心して任せられそう。若葉、頑張った、おめでとう!』って、顔をグチャグチャにしながら言ってくれたことが本当にうれしかった。ありがとう、ママ」と言われると、感極まってハンカチで顔を覆っていた。何年たっても、当時を思い出すと感情がこみ上げてくる……親子が全力で挑まなくてはいけないという中学受験の一面をよく表しているように思う。

「りんこさん、今は本命校に落ちたことも、神様が本当に若葉に合ったところへ導いてくれたからだと思っています。塾の先生にもA学園にも、もちろん若葉にも感謝です。自慢の娘です……」

 次期部長が内定している若葉ちゃんは今、常連である全国大会に向かって燃えている。

 今、思うような結果が出ずに気落ちされている中学受験生の母は多いことだろう。しかし、「まさかの不合格」を前にした親の心持ち次第で、未来は変わるように思う。筆者は長年の取材で「ご縁があった学校が一番良い学校」ということを確信している。なので、中学受験を終えた母は、不合格にとらわれ続けるのではなく、願うならば、今まで最高に頑張ってきたお子さんと一緒に、最後の小学校生活を楽しんでほしい。

最終更新:2019/08/14 18:15
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