[おちぶれ続けるアラフォー風俗嬢と男たち]

アラフォー風俗嬢がデリヘルで出会った、酸素ボンベで繋がれたおじいさんとの2時間

2019/02/03 21:00
Photo by Fotofeel.com from flickr

――デリヘルで風俗デビューし、出稼ぎ&吉原ソープを掛け持ちした後、現在は素人童貞などSEXに自信のない悩める男性のためにプライベートレッスンを行うアラフォー風俗嬢が、男たちの姿をつづります。

 初めて障害を持ったお客さんに入った時の話。入る前に、スタッフから「大丈夫か」と聞かれたけれど、詳しい情報はなく、ただ知っていたのは障がい者さんである、ということだけ。嫌ってことはないけれど、情報不足に不安を抱えて、ドキドキしながらホテルへ。なんだ! 思っていた障がい者さんとは違うじゃないのー! 

 確かに、10年程前にしたという脳の手術痕が、頭頂部の左右横に25cm位あるけど、言動はしっかりしている。運悪く、同年に呼吸が苦しくなり検査をしたら肺気腫だったとかで、胸の中心を縦に25cmくらいの大きな手術跡もあった。そのせいで24時間常に鼻へ管をつけ、酸素ボンベをカートで引く生活をしているそうだ。会話ができるだけで、とにかく安心した。

 あちこち病気しまくりで、通院は脳外科、内科、精神科、泌尿器科にかかっているそう。病気を患ってから不眠症になり精神科に行っているとのことで、立て続けに頭を開いて肺も開いて……と思うと、つらそうでかける言葉が見つからなかった。

 管が繋がっているので、トイレのドアもお風呂のドアも半開きにして、繋がったまま湯船に浸かる。もちろん、ベッドに横になっている時も、キスしている時も、鼻には酸素が送られている。いつもの風俗のお仕事で、いつもと違う景色なのは、鼻から酸素を吸う機械が繋がれていることだけ。ながーい管が、鼻から酸素ボンベに繋がっていること以外は、至って普通なんだ。

 それなのに、あちこちのデリヘル店に障がい者でも遊べるかと問い合わせたところ、何店舗も断られ、唯一OKだったのがうちのお店だったそう。本日、私指名で2度目のお店利用。

 年齢は60代くらいで、声はかすれ切ってしまって、聞き取りにくいほど小さなハスキー声、動作はまるで動物のナマケモノくらいスロー。全身を攻めていると、ほかにも小さな手術跡がちらほらと見えた。不運が続き、肺と脳の手術を同じ年に患い、何度も手術し大変な思いをした彼は、まるで悟りを開いているかのようにいい人で、私のくだらないジョークに、かすれた声がさらに聞こえなくなるほど何度も笑ってくれた。眼には優しさと切なさと一生懸命生きている感じがすごく伝わってきて、途中、少し泣きそうになってしまった。

 でも、せっかく楽しむために来てくれているのだから、エロの発散をして帰ってもらわなくちゃ。

 昔、私も腎臓の病気をして、脇腹に20cmほどの大きな傷跡があり、そこに2~3cmほどの穴を開けたまま、腎臓から直接おしっこを排出する生活を半年間送っていた。24時間ずっと脇腹からおしっこを出し、外出時は尿バッグを太ももにつけて、その上から成人式の振袖も着た。脇腹に管が刺さった状態で、その上から締める帯の痛みは、二度と思い出したくない。

 部位は違うし、つらさも同じとは思わないけれど、ずっと管に繋がれて自由の利かないつらさなら、ほんの少しわかる。傷跡を見せ、「仲間だね~」と笑ってみせた。とても驚いた顔をしていたけど、手術経験者同士、「泌尿器系の病気の痛みって地味にツラいですよね~」と笑い合った。

 結局、射精はできなかったけど、何度も店外デートに誘っていただいたから、きっと楽しんでいただけたのだと思う。「外出時に使う酸素ボンベは何時間持つんですか?」って聞いたら、約8時間と。「じゃあ、お泊まりデートはできませんね」と冗談を言ったら、「大丈夫。2本持って行くから」っていうエロジョークも出てきて安心した。いくつになってもスケベ根性を持つことは、長生きの秘訣なんだな、とあらためて実感。

 翌月、再び出勤すると、おじいさんから2回目の指名が入った。しかも、前回より1時間長い3時間コース。でもイかないので、結局ほぼトークで終わった。この街には出稼ぎで来ているから、今回で会えるのはラストだと伝えると、残念そう。でも、次なる夢を伝えると、頑張れと言って納得してくださった。

 話していると、ものすごく優しそうで楽しそうな笑顔になるおじいさん。老人ホームにショートステイを月1度、数泊しているらしいので、年齢もそれなりなのだろう。でも、「老人ホーム」という言葉を言いにくそうに濁していて、「まだ入居するわけじゃないんだよ」「何かあった時のためになんだよね」と言ったり、ちょっとバツが悪そうだった。「避難訓練と一緒だね! 備えあれば患いなしだから!」と返すと、笑って「そうそう!」って。他愛もない話で笑ってくれる。

 大病しているのに、前向きで明るいおじいさんと話して元気をもらった。健康に感謝し、頑張って生きなくちゃと思う。最後はハグをしながら、「体に気を付けて頑張ってくださいね」って言ったら、私にも「体に気を付けて頑張るんだよ」って言ってくれて。扉を閉めて先に部屋を出ると、涙が溢れそうになった。

*曼荼羅*(まんだら)
デリヘルで風俗デビューし、出稼ぎ&吉原ソープを掛け持ちした後、現在は素人童貞などSEXに自信のない悩める男性のためにプライベートレッスンをしているアラフォー風俗嬢。子宮筋腫と腎臓の手術経験があり、現在は子宮頸がん中等度異形成持ち。売りはHカップのおっぱい。
ブログ「続・おちぶれ続けるアラフォーでぶ女の赤字返済計画
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最終更新:2019/02/03 21:00
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