「リセッシュ」「ビオレ」も爆売れ 人気通販サイト「ロハコ」の起こした革命

2019/01/26 20:00

日用品を中心にファッション、雑貨などを販売するアスクルのネット通販「ロハコ」。特に30代・40代の女性の支持を集めており、実に利用者の7割を女性が占める。2012年にサービスを開始して以来、累計利用者は500万人を超え、押しも押されぬ人気通販サイトに成長した。さらに、ユニークなオリジナルヒット商品を連発していることでも知られる。

 その原動力となっているのが、14年2月にアスクルの本社内に設置された研究拠点「LOHACO EC マーケティングラボ」。ビッグデータを活用したマーケティング手法の研究とスピーディーな実践を追求する活動を行っている。その参加企業は当初の12社から127社まで拡大している。

生活になじむ“本音デザイン”
 ロハコは「暮らしになじむデザイン」を掲げており、売場を通らないからこそ実現できる生活者起点のデザイン商品(Consumer Brand商品)を、アスクルと参加メーカー双方が自由な発想で開発している。

 従来の商品は、売場で商品を手に取ってもらうため、いかに目立ち、機能性を伝えるかを追求し、生活者が家で使うことを考えずにパッケージデザインされてきた。しかし、ロハコはネット通販なので、商品の情報はサイトに書いてさえあればよく、必ずしもパッケージに盛り込む必要はない。

 リビング、寝室、玄関など使用シーンに応じて暮らしになじむ、使い勝手のよいデザインを求めている生活者は、「スモールマス」だが、必ず存在するはず。ロハコはそう考え、それに合わせた商品を開発することにした。

デザイン変更で売上が35倍になった商品も
 そうした考えから生まれた代表的な商品が、花王の「リセッシュ除菌EX」。働く女性へのヒアリングも実施し、室内に置いても違和感がなくなじむデザイン容器にし、16年2月に「ストーン」を発売。2年目は「リラックス」、昨年は「ハンドステッチ」とデザインを変えて展開してきた。

 さらに、質感にこだわったアイテムも登場した。同じく花王の「ビオレu泡ハンドソープ ポーセリン」は、有田焼の窯元で絵付け・窯焼きした原画をボトルに転写しているので、まるで陶器のように見える。

 こうして、中身が同じでも暮らしになじむパッケージデザインに変えたところ、新たな顧客の獲得につながった。商品をしまい込むことがなくなり置きっぱなしにするようになったことで、利用頻度も上がるという好循環も生み出した。

 これらのデザインは「デザインがカワイイ」「今までにないデザインが素敵」など商品レビューでも好評で、リセッシュストーンデザインボトルは実店舗の商品より100円近く高かったにもかかわらず、発売8カ月で約7.5倍を売り上げた。ビオレuポーセリンも店頭より約70円高かったが、販売開始30週で約35倍も売れた。

デザインだけでなく、コラボ商品やアイデア商品も続々登場
 昨年から、参加企業同士のコラボも始まった。エステーの「消臭力 クリアビーズ イオン消臭プラス」、大王製紙の「ラクらクック キッチンペーパー」、フマキラーの「アルコール除菌スプレイ」の3商品は、キッチンシーンでの使用を想定し、統一したデザインで展開している。

 ロハコで扱う商品は、日用品だけでなく医薬品にも広がってきた。目薬の「ロート アイストレッチコンタクト 4本セット」は、容器に4種類のカワイイ動物のイラストが描かれ、さりげなく励ましてくれる応援メッセージも添えられている。従来のそっけない薬の容器のイメージとは異なる、親しみのもてるデザインだ。頭痛薬「バファリンルナi・バファリンプレミアム 携帯入り」も、スマホカバーのようなカラフルな花柄のケースに収められている。

 パッケージのデザインだけではなく、機能性を追求した商品も登場している。サッポロビールの「黒ラベル コロコロストッカー」は、冷蔵庫にそのまま入れて、1缶取り出すと中の缶がコロコロと下へ転がるアイデア商品。上から補充し下から取り出すことで、いつでも一番冷えたビールを取り出すことができる。

 商品の中身に踏み込んで開発するアイテムもある。湖池屋のポテトチップス「すっぱムーチョ」の酸味を高めて食感も堅めにした新商品「Super Sparkling mucho」を昨年9月に発売した。酸味をかなり高めて堅めの食感にした。仕事のストレスや育児の疲れを吹き飛ばす、がんばる女性の「気分爽快ポテトチップス」としてアピールしている。

 マルコメの「ダイズとアーモンドのロカボクッキー」は、小麦粉の代わりに低糖質の大豆粉を使用し、1枚あたりの糖質量をわずか0.9gに抑えた。菓子を食べながら、がんばりすぎない糖質制限を提案している。

約130アイテムを送り出した「暮らしになじむデザイン」シリーズ
 メーカーアイテムだけではなく、オリジナル商品も展開している。「ロハコウォーター410ml」は、スウェーデン出身のデザイナーを起用し、ラベルの代わり、「滝」「滴」「霧」「雪」のモチーフをボトルに直接エンボス加工した、スタイリッシュでクールなデザイン。スリムなので、バッグに入れて持ち運ぶのも便利。キャップ天面のQRコードを読み取れな商品詳細情報が確認でき、ロハコからの再購入もできる。

 このように、デザインだけではなく商品にストーリー性を持たせ、機能性や中身にもこだわり、メーカーの開発チームと緊密に連携し、社内の女性スタッフの意見やユーザーのレビューにも耳を傾けて進める「暮らしになじむデザイン」シリーズ。これまで約130アイテムを世の中に送り出してきた。

 昨年10月には「代官山T-SITE Garden Gallery」で、ロハコとコラボした48社の58商品を展示する「暮らしになじむLOHACO展」が開催された。

 デザインや機能などで通常のメーカー品とは完全に差別化できている「暮らしになじむデザインシリーズ」。スモールマスのマーケットを意識し、作り手や売り手目線ではなく、生活者視点で商品を開発することで、女性が共感でき、「使ってみたい」「食べてみたい」と思わせる新たな商品群を開拓した意義は大きい。

最終更新:2019/01/26 20:00
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