【連載】オンナ万引きGメン日誌

女子小学生の常習犯を捕捉! 万引きGメンがいまだかつて聞いたことのない「盗みの理由」

2019/01/15 17:00

“悪いことをしています”と顔に書いてある少女

 お弁当を選ぶお客さんに紛れて惣菜売場を警戒していると、まもなくして小学生らしい女の子が店に入ってきました。周囲を見渡しても家族らしき人の姿は見当たらないので、どうやら1人で来たようです。女の子の腰元には、男の子用と思しき色合いの大きなエナメル製スポーツバッグがかけられており、よく見ればチャックが全開になっています。大きく口の開いたスポーツバッグに、自然と目を奪われた私は、この女の子の行動を見守ることにしました。

 まもなくしてパック入りのフライドポテトを2つ重ねて手にした女の子は、その上にたらことツナマヨのおにぎりを1つずつ載せると、人気のない菓子売場に早足で移動していきます。そして、腰元のスポーツバッグを前方に持ってきた女の子は、警戒の目で周囲を窺うと、その中に商品を隠しました。その顔を見れば、『名探偵コナン』(小学館)に出てくる黒い人のような目になっており、“悪いことをしています”と顔に書いてあるように見えるほどです。

 それから、周囲に人がいないことを再度確認した女の子は、目の前に陳列されるお菓子を選ぶこともなく棚からむしり取るようにして、次々とスポーツバッグの中に隠していきました。お目当ての商品は、少し高価なチョコレートやビスケット、ボトルガムなどで、いくつかの駄菓子までスポーツバッグに放り込んでいます。たくさんのお菓子を詰め終えて満足したのか、スポーツバッグのチャックを閉めた女の子は、それを腰の位置に戻すとエスカレーターに乗り込みました。

 後を追う私の存在には少しも気付かないまま、玩具や文房具、電化製品を扱う3階で降りた女の子は、ファンシー文具や色ペンセット、シール、ぬいぐるみなどといった商品を、フロアのいたるところで堂々とスポーツバッグに吸い込ませていきます。現認した商品の数が多いほど誤認の不安なく声をかけられるため、犯行の全てを目撃したいところですが、あまりに品数が多くて覚えきれそうになく、注視に気付かれる可能性もあるので無理はしません。もちろん、現認した数が多いほど、被疑者の犯意は明確になるものの、その分だけ調書作成にかかる時間は長くなるので、あまりに多くを見過ぎてしまい後悔したこともありました。万引き犯を逮捕するのに、盗まれたものを全て覚える必要はなく、然るべき場所で声をかけたときに、お金を払っていない商品が1つでも出てくればいいのです。

 3階での犯行を終えた女の子は、階段を使って化粧品売場のある1階まで降りると、そこでもいくつかの商品をスポーツバッグに隠し入れました。どうやら口紅やネイルグッズなどに手をつけているようですが、すでに十分な現認があるので遠巻きに女の子の位置だけを把握していると、ようやくに出口に向かって歩き始めました。不自然なほどに後方を振り返る女の子の様子が、その犯行を裏付けているように思えます。

「お嬢ちゃん、こんにちは。おばちゃん、このお店の人なんだけど、なんで声かけられたかわかるよね?」
「なんですか? 私、関係ありません」
「お菓子とか文房具とかのこと、おばちゃん、みんな知ってるわよ」
「……ううっっ、ごめんなさい」

 すぐにあきらめて泣き始めた女の子を事務所に連れて行き、スポーツバッグに隠したモノを出してもらうと、ありとあらゆる商品が複数ずつ出てきました。盗んだ商品以外のモノは、なに1つ出てこなかったので、盗みにきたとしか思えない状況です。駆けつけた店長と一緒に人定事項と所持金を尋ねると、この店の近くにある団地に住む小学5年生だった女の子は、230円しか持っていませんでした。

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