仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

社会学者・古市憲寿氏が、テレビで売れっ子なワケ――「カネより友達」発言に感じた甘さ

2019/01/10 21:00

視聴者を暗くさせない、古市氏の“若さゆえの甘さ”

 しかし、古市氏の最大の魅力は、別のところにあると思う。

 古市氏は元日放送の『今夜くらべてみましたSP』(日本テレビ系)に出演し、HKT・指原莉乃、フリーアナウンサー・羽鳥慎一と「いくらお金があったら、安心か」について話していた。羽鳥アナはお金に頓着がなく、「ないなら、ないなりに生活できる」と将来に不安はない様子。指原は旅行や物に興味はなく、実家を新築したことと、60歳から10万円もらえる保険にお金を使っていると語った。一方の古市氏は、「結局、友達がいるかじゃないですか?」「助けてくれる友達がいるかどうか」と最終的に頼れるのは、カネではなくヒトであると結論づけた。カネがあれば安心できると言われたら、芸能人より低収入であろう一般人は、下を向くしかないため、この発言に好感を抱いた視聴者は多いだろう。

 が、私の感想は「若いな」である。ここで言う若さとは、年齢ではない。変化についての想像力がないという意味である。中瀬ゆかり氏は、ウェブサイト「AERA.dot」の連載「50代ボツイチ再生工場」で、古市氏について「得意技はお金持ちのジジババを転がすこと」と書いている。古市氏は、LINEをやっていないジジババ世代に、アプリをインストールしてあげることでホットラインを築き、食事にこぎつけて、ごちそうしてもらっているそうだ。『今夜くらべてみましたSP』での「助けてくれる友達」とは、こういうお金持ちのことを指すのかもしれない。確かにお金持ちと友達でいれば、有形無形の支援が望めるだろう。

 しかし、問題は古市氏が助けを求めるくらいの窮地に陥った時、そのお金持ちが今と同じように古市氏と交際してくれるか、という点ではないだろうか。古市氏は「メリットのない人とは、付き合わない」と公言しているが、「相手も自分と同じように、メリットを感じない人とは付き合わないかもしれない」という想像力を持たないようだ。相手の視点で物を考えないあたりに、未熟という意味の若さを感じずにいられない。元光GENJI・諸星和己といった、社会現象を巻き起こすほどのスーパースターたちは「売れなくなったら、1人残らず人がいなくなった」と一様に話すが、カネと友情はある程度連動している。カネがある(いい仕事をする)と友達も多くなるが、カネがなくなると友情もやせ細るのが世の中というものではないだろうか。

 けれども、この若さゆえの甘さが、古市氏最大の魅力でもあると思う。あまりに現実的すぎるコメントでは、視聴者が暗い気持ちになってテレビを見たくなくなってしまうのだ。

 チョコレートが大好きで、家の冷蔵庫にはチョコレートしかないと『ワイドナショー』で発言していた古市氏。人生のほろ苦さを無視したセミスイートなコメントが、彼の持ち味なのかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2019/01/10 21:00
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