安藤美姫、日本での「デブ」「メス豚」バッシングに嫌気 女性アスリートの体型を揶揄するな

2018/11/02 20:00

 元プロフィギュアスケート選手の安藤美姫(30)が、31日の『戦え!スポーツ内閣』(毎日放送系)に出演。自身の経験を踏まえて、スポーツ選手の体型についてことについて持論を述べた。

 安藤は、2006年にトリノ五輪に出場した頃の自身について、「自分は(他の日本人選手と比べて)結構がっつり身体の凹凸がある方だった」と説明。女性はホルモンの関係で10代なかば頃から体つきが変わるが、「18歳の(トリノ)オリンピックのときにそのピークが来てしまって、あの時初めて食事制限をした」と明かした。

 当時、朝食はおにぎり1個、昼食は茹でたブロッコリーとささみ、卵焼きなど油をいっさい使わないメニューに変更し、夜食もサラダと肉のみで炭水化物を抜いた。しかし、それでも体型は変わらなかったという。トリノ五輪後は、「当時、SNSとかなかったでしょう。手紙で 、『メス豚』とか『デブ』だとか『日本の恥』とかめっちゃ送られてきたんです」と、誹謗中傷を受けた過去を述懐した。

 安藤は続けて、「五輪で結果を残せなかった(15位)のであれなんですけど、なんで知らない人からこんなこと言われて、ストレス溜めて食事制限までしたのにって思って。日本にいたくなくて海外に行ったんです」と、その誹謗中傷が海外に拠点を移すきっかけになったことを打ち明けた。

 安藤は、日本でSNSが発達し普及して以降、よりいっそう強い誹謗中傷に晒されていく。未婚で出産したことや、ハビエル・フェルナンデス選手との交際を明かしたことなどでバッシングが相次いだ。その点には番組では触れなかったが、「なぜ知らない人からこんなことを言われるのか」という思いはおそらくあることだろう。

成長期の無理がたたるケースもある
 思春期の女子にとって、体型へのバッシングがどれほどストレスになっていたかは想像に難くないだろう。この番組にレギュラー出演している元水泳選手の青木愛(33)も、「メンタルやられますね。魅せる競技だから余計言われやすい」と、同情を示している。

 安藤はそのうえで、「皆さんに知っていただきたいのは、(選手にも)その後の人生がなくなってしまう場合もあるんですね。子どもができない身体になってしまう(こともある)。その時に頑張ったがために。」と語り、応援してくれるのはすごくありがたいとしながらも、「(選手も)自分の人生があって生きているっていうのを忘れないで、応援してほしいなと思います」と呼びかけた。

 無理な食事制限やダイエットで身体に異常を来し、無月経状態に陥ってしまう女性アスリートは少なくないという。彼女らに無神経な罵詈雑言を浴びせかけることがいかに罪深いか、我々はよく知ったうえで自重しなければならない。

身体の成長は、競技後人生への希望
 安藤美姫は8歳の頃から氷上に立ち、ジュニア時代から世界選手権で活躍。2002年には女子選手として史上初めての4回転ジャンプを成功させて人気を呼び、現在の日本におけるフィギュアスケート人気を築いた立役者といえるだろう。

 しかし、トリノ五輪でメディアの注目を一気に浴びた頃からだろうか、安藤美姫はバッシングの対象にもされやすい存在にもなっていた。とりわけ、目に見えて叩きやすい体型の変化をやり玉にあげられることが多かったようだ。

 安藤はこの時、フィギュア選手として体重増減についてかなり悩んでいたという。今でも、おりに触れて当時を振り返り、〈注目されたストレスもあったと思うけれど、体の変化の時期だったと思う。どんなダイエットをしてもやせなかった〉〈どう対処していいか分からず、つらかった〉と語っている。(2011年6月「日本経済新聞」より)

 他方で、ホルモンバランスによって女子選手の体が丸みを帯び出す17歳を「魔の年齢」と表現するスポーツ指導者もいるという。骨格や体脂肪などの変化が競技に支障するというのもまた事実だろう。しかし安藤美姫の言うとおり、選手の体の成長は、競技を離れてからも続く人生ーーー将来の妊娠や出産への希望でもある。かつて安藤美姫に心ない言葉を送った者たちには、まるで想像力が足りなかったとしか思えない。

 バッシングを乗り越えて活躍し続け、競技を終えた後の人生を謳歌している安藤美姫だからこそ、説得力のある言葉ではないか。

(今いくわ)

最終更新:2018/11/02 20:00
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