祭りのよう

DA PUMPオタ、野菜を買う人、家族連れ……「東京拘置所矯正展」に群がる人々の実態

2018/10/16 17:00

野菜を買う人と「DA PUMPヲタ」が混在

「野菜百円市」に群がる人たち

 ついに敷地内に入りましたが、来場者のお目当てはやはりDA PUMPのようで、ステージ前の閉ざされた門の前には、すでに人だかりができています。目の前にいたご婦人は「こっちは野菜を買いに来てんのよ。ステージとかどうでもいいから門開けてよ!」と人に聞こえるような声でつぶやいており、さっそく不穏な空気が漂っています。門が開くと、ステージ前に人がなだれ込みます。その直後に入場制限がかかり、無情にもシャットアウト。再び閉ざされた門の向こうでは、遅れてきた人たちがゾンビのように群がっておりました。

 ステージがなんとか見える場所を確保して、改めて周りを見渡すと、あからさまなDPC(DA PUMPファンの総称)はあまり来ていない様子。お客さんの大半は「見れるもんは見とこう」くらいのテンションでのんびり待っています。そのまま待機すること数十分、ついにDA PUMPとNGT48メンバーが登場し、まずはテープカットイベントが執り行われました。

 そしていよいよ、お待ちかねの「U.S.A.」がスタート。白スーツに身を包んだDA PUMPメンバーが踊りだすと、周囲から野太い声で「L・O・V・E ラブリーISSA!」コールが飛び出しました。どうやら、ハロプロ経由の「DA PUMPオタ」と呼ばれる男性ファンの一団が駆けつけていたようです。今回の「U.S.A.」のヒットに火をつけたのは、モーニング娘。などを擁するハロープロジェクトのファン(ヲタ)たち。「U.S.A.」のトンチキな雰囲気が、つんく。が作る楽曲群と似ているということで騒ぎ出し、いまやDA PUMPの追っかけになっているという、謎のねじれ現象を起こしているのです。その他のお客さんはコールなどせず、スマホを構えて撮影するのに必死。ISSAのボーカルはさすがの安定感で、拘置所に収監されている人たちにも、きっと歌声が届いていることでしょう。

■「性格検査コーナー」も大人気

プリズン弁当「酢豚」。麦飯で健康的

 ステージが終わった直後から雨がパラついてきましたが、人が多すぎて危険ということで「傘さし規制」に。仕方なく雨に濡れながら露店に向かいます。

 おなかが空いてきたので、飲食メニューを物色していると、矯正展名物という「プリズン弁当」を発見。メインのおかずが酢豚・からあげ・生姜焼きの3種類から選べるというので酢豚をチョイスしました。名前のインパクトから、拘置所のクサい飯を再現したものかと思ったのですが、食べてみると至って普通の弁当で、なにがプリズンだったのか最後までわからずじまいでした。

客が殺到していた木工品即売所

 ほかには、地元企業や各都道府県の物販ブースが所狭しと並んでおり、特に「100円野菜コーナー」には人だかりが。また「刑務所作業製品販売コーナー」には、全国の刑務所に収監されている方々が作った木工品や布・革製品が売られています。別にこれといって良いものには見えなかったですが、「広島刑務所の木工ティッシュケース」がなぜか大人気で、奪い合うように2コ、3コと買っていく人も。

 物販だけでなく、60の質問に「はい・いいえ・?」で回答することで、自分の性格の傾向を知れるという「性格検査コーナー」も大人気。ちょっとしたアトラクションのように楽しんでいる家族連れもいましたが、結果によっては、別の立場でこの場所に舞い戻ってくるかもしれない可能性が判明してしまうだけに、はた目で見てるだけでもヒヤヒヤしてしまいました。

 野菜目当ての人、ひまつぶしの家族、インスタのネタ探しのカップル、DPC……。ほんの1時間ほど滞在しただけで、さまざまな人が行き交う姿をみることができた「矯正展」。個人的には次回もまた行きたい、と感じることはなかったですが、「U.S.A.」の歌詞「だけれど僕らは地球人。同じ星(ふね)の旅人さ」というメッセージがこれほど響く場所もないので、来年もゲストはDA PUMPでお願いできればと思います。
(五木 源/清談社)

最終更新:2018/10/16 17:00
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