『TOEIC亡国論』著者・猪浦道夫氏インタビュー

「TOEIC」が信頼できない3つの問題点! 『TOEIC亡国論』が指摘する欠陥とは?

2018/10/30 15:00

『TOEIC亡国論』(集英社新書)

■問題点2)スピーキング能力、コミュニケーション能力は測れない

 TOEICには、リスニングとリーディングのテストがあり、試験時間は全体で約120分。リスニングは45分間で問題は100問、リーディングは75分間で100問、すべてマークシート方式だ。試験時間に対して問題数が多いため、文章をしっかり理解して読む力を試すのではなく、素早く答えを見つけ出す瞬発力を重要視している傾向が見られる。

「TOEICにはスピーキング試験がないので、英語の発話能力が測れません。つまり、いくら高得点を取った人でも、英語をしゃべれるのかどうかはわからない。英文を読解する問題もあるとはいえ、文意に合ったものを選択する形式なので、正確に日本語に訳せているのかも、翻訳能力もはっきりしないのです」

 つまり英語によるコミュニケーション能力は、TOEICではまったく判別できないという。猪浦氏によれば、TOEICでも正式なスピーチレベルのヒアリング、リーディングの力をある程度測ることは可能だそうだ。しかし、実際にしゃべることができるかどうかは違う話だと指摘する。

■問題点3)英検のほうがテストとして優秀

 現状ではTOEICに代わる英語力認定試験がないため、学生や転職希望者は少しでもTOEICの点数を上げようとしている。こうした欠陥がありつつも、なぜ企業はTOEICにこだわるのか? その理由を猪浦氏はこう語る。

「経営陣が、社員に英語力を求めるのは理解できます。しかし、どのポストの人に、どのような英語力が必要なのかという具体的なことは経営陣にもわからない。そのため、何も考えずにTOEICの点数だけを基準に英語力の有無を判断しているのが実態です」

 そこで猪浦氏は、新たな試験をつくるべきだと提案する。

「問題文まですべて英文のTOEICに比べれば、まだ英検(実用英語技能検定)のほうが、1次試験の筆記パートは語彙を問う空欄補充問題や長文読解問題、後半のリスニングパートは会話文や音声による長文聞き取り問題もあり、日本語を介した日本人向けの英語力テストとしては優秀だと思います。しかし、ビジネスパーソン向けではないので、メールや交渉スキルを含めたビジネス英会話など、それぞれの分野に特化した試験を国がつくるべきでしょう」

 2020年度から新しく始まる「大学入学共通テスト」の英語試験では、従来のマークシート試験のほかに、英検やTOEICなどの民間試験のスコアを活用するスタイルに変化するといわれている。かねてより問題点が指摘されてきたTOEICだが、英語力を測る指標として、今後さらに信頼が高まっていくだろう。とはいえ、国際基準とは程遠い、日本独自の能力テスト。欠陥も大いにあると知ったうえで挑むのが賢明だろう。
(福田晃広/清談社)

最終更新:2018/11/01 19:28
TOEIC亡国論 (集英社新書)
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