“中学受験”に見る親と子の姿

「中学受験は害悪」という公立小の先生も? 「行事と塾の両立」「担任の無理解」めぐる親の葛藤

2018/09/30 16:00

合唱コンクールの練習を拒否、学校を欠席し続けた女子

 学校全体で約1割の児童が受験する小学校に通う友美ちゃん。その学校では、毎年2月に高学年の合唱コンクールを開催しており、1月は各クラスで練習が過熱する。

 朝練は当然、放課後も全員参加での練習と、準備に余念がないそうだが、中学受験組の友美ちゃんのお母さんは、これに大反対。インフルエンザを心配したこともあり、結局、友美ちゃんを年明け早々から休ませ続けたのである。

 ところが、意に反し、友美ちゃんは不本意な結果で受験を終えてしまう。しかも、学校に復帰した時には、友美ちゃんの居場所はすでに失われていたそうだ。友美ちゃんはそのまま学校には行けなくなり、結局、卒業式にも参加しなかったという。

 担任の先生の「卒業年度だからこそ、合唱コンクールも大切ですよ」という言葉を無視しての行動であったため、結果的に先生の協力も得られず、友美ちゃんにとっては6年生の大切な節目の季節が、とてもつらい思い出と化してしまったのだ。

 一方、別の学校ではこういうことがあった。その学校では毎年1月の下旬に、社会科見学を実施しているのだが、翔真君のお母さんは迷わず参加させた。

「インフルエンザを心配して、欠席させる方もいましたけど、かかったら、かかったで仕方ないって腹を括りました。1月受験を失敗してしまった翔真にとっては、気分転換が必要だなって思ったので、参加させたんです」

 結果は大正解。行き先が国会議事堂見学ということで、公民分野にめっぽう弱かった翔真君に火が点き、しかも、本番の試験に「三権分立」の問題が出たらしい。

 翔真君はのちに「あの時、行っといて良かった! お母さん、行かせてくれてありがとう!」と言ったそうだ。

 筆者は「学校行事と塾」というお悩みを寄せてくださる保護者の方々にはこういうふうに答えている。

「中学受験生は学校行事に時間を取られるくらいのことで、成績は落ちたりもしないし、ましてや不合格にもならない」

 小学生には小学生の段階でしか、やれないことがあると思うからだ。筆者の長年の取材では、学校行事で責任ある立場を完遂したり、受験直前まで生活のリズムを崩さなかった子たちの方が、圧倒的に“勝率”が良いという結論も出ている。

 子どものために親として何をすべきかを、強く考えさせられる中学受験。もし、この問題で悩んでいる読者の方がおられるとしたら、ぜひ、小学校生活も受験勉強もどちらもマックスで楽しむという意気込みで立ち向かうことをお勧めしておきたい。
(鳥居りんこ)

最終更新:2019/08/14 17:51
中学受験を考えたらまず読む本 2018-2019年版 (日経ムック)
明らかな嫌がらせには絶句しちゃうよ~!
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