ドラマレビュー

瀬戸康史、『透明なゆりかご』由比院長で完成した『あさが来た』以降の男性像

2018/09/24 21:00

一見頼りないが、包容力のある男性という共通像

 瀬戸は現在30歳。2005年に『第2回D-BOYSオーディション』準グランプリを獲得して芸能界デビュー。2年後に出演した『仮面ライダーキバ』(テレビ朝日系)の主人公を演じたことで大きく注目された。「平成ライダー」と称される仮面ライダー・シリーズは、古くはオダギリジョーや要潤、近年では菅田将暉、福士蒼汰、吉沢亮、竹内涼真といった若手イケメン俳優の登竜門となってきたドラマ枠で、若手女優にとっての連続テレビ小説(以下、朝ドラ)のような役割を果たしてきた。瀬戸も、そうやって世に出たライダー俳優の1人だった。

 その後、瀬戸は『オトメン(乙男)』(フジテレビ系)等のイケメンドラマに多数出演。NHKでは『眠れる森の熟女』というドラマで、草刈民代が演じる熟年離婚をした46歳の年上女性と恋愛関係になる、御曹司で高級ホテルの総支配人の男性を演じており、少し頼りないがしっかりしているお坊ちゃんという役柄だった。大きな転機となったのは朝ドラ『あさが来た』(NHK)だろう。本作は幕末から明治を舞台に、女性実業家・白岡あさ(波瑠)の生涯を描いたドラマだ。瀬戸が演じたのは物語終盤に登場する、日本初の女子大学を作ろうとする成澤泉。何を考えているかわからない変人だが、女子大設立の理想に燃える熱い姿が視聴者から支持された。

 これ以降の瀬戸は、見た目こそ線が細いイケメンで、少し頼りないが、女性主人公を支える先生的ポジションという役が増えていく。今年の1月クールの月9ドラマ『海月姫』(フジテレビ系)では、クラゲオタクで引きこもり気味の少女・月海(芳根京子)と一緒にファッション・ブランドを立ち上げる青年・鰐淵蔵之介を好演した。政治家の御曹司で女装男子という変人キャラだが、それ以上に、月海を支えて成長を見守る“お師匠さま”的なポジションがハマっていた。

 『透明なゆりかご』の由比院長は、『あさが来た』以降の集大成といえる役柄だ。一見頼りないが、包容力のある“教師キャラ”というイメージは、今作で完全に定着しただろう。若手イケメン俳優は成長するほど、次のステップが難しくなっていくものだが、瀬戸の場合は歳を重ねた現在の方が生き生きとしており、新しい魅力を次々と開花させている。
(成馬零一)

最終更新:2018/09/24 21:00
透明なゆりかご(7) (KC KISS)
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