【連載】オンナ万引きGメン日誌

高級スーパーで万引きしたシングルマザーに再会……Gメンが目撃した、あまりにも切ない“その後”

2018/09/22 17:00

シングルマザーは、床に伏して背中を丸め泣き始めた

「あれ、お姉さん。この前も会わなかったっけ?」
「…………」

 あたりまえのことですが、短期間に犯行を繰り返してしまうと逮捕される可能性は高まり、警察官のあたりも強くなります。犯歴照会の結果、2週間ほど前にも駅前のスーパーで捕まっていた彼女に、どちらかというと意地悪な警察官が吐き捨てるように言いました。

「あんた。今回は、しばらく帰れないかもしれないな」
「子どもが家で待っているんです。もう2度としませんから許してください!」
「それ、この前も聞いた」
「う、う、うわあーん……」

 幼い子どもを持つシングルマザーの場合は、子どもの生活を保護するために在宅調べとなることも多く、いまのところどちらに転ぶかわからない微妙な状況に置かれているといえるでしょう。おそらくは戒めのために脅したのだと思いますが、それを真に受けた彼女は、膝から崩れ落ちると床に伏して、背中を丸めて子どものように泣き始めました。大音量で泣きわめく彼女を見下ろす店長の嫌気の差した顔が、とても冷たく、どこか幻滅した気持ちになったことを覚えています。最終的に、逮捕されることなく基本送致された彼女は、お店の従業員に身柄を引き取られることで帰宅を許されました。その後の処分を、私が知る由はありません

 図らずも同じ駅で降りた彼女の背中をみながら改札を出ると、彼女もまた私の行く方向に向かって歩いていきます。このまま現場に来られて万引きされたらどうしよう。一抹の不安を抱きながら素知らぬ顔で歩いていると、彼女がパン屋さんに入っていくのが見えました。

(ああ、ここなのか……)

 なんの気なしに店の入口をみれば、明るく可愛らしい店の雰囲気には似合わぬ、どこか重々しい感じがする張り紙が貼られています。その内容は、今月末で閉店するというもので、女が1人で生きていくことの難しさを思い知らされました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

最終更新:2018/09/22 17:00
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