ドラマレビュー

『探偵が早すぎる』滝藤賢一、主演ドラマで爆発した“濃さ”と“過剰さ”の迫力

2018/09/10 19:00

胃もたれするほどの過剰な役と、脇に徹する役の振り幅

 滝藤賢一は現在41歳。仲代達矢が主宰する無名塾出身の俳優で、2000年に公開された塚本晋也監督の映画『バレット・バレエ』のオーディションに合格して以降、数々の映画やドラマに出演している。大きく注目されたのは13年に大ヒットしたドラマ『半沢直樹』(TBS系)だろう。本作は主演の堺雅人を筆頭に香川照之、吉田鋼太郎、手塚とおる、片岡愛之助といった濃い演技を披露する数々のおっさん俳優を発掘した。滝籐もその1人だが、演じた役は『半沢直樹』の中では薄味の銀行員だったため、当時はそのケレン味を見せていなかった。

 個人的に滝籐が面白いと思ったのは、17年のドラマ『大貧乏』(フジテレビ系)で演じた浅岡礼司だ。一言で言うと主人公を追い詰める謎の男だが、とても不気味な存在感を発揮し、『MONSTER』や『20世紀少年』(ともに小学館)など浦沢直樹のサスペンス調漫画に出てくる悪役を実写化したような佇まいだった。その演技力の振り幅に驚かされた。

 初の主演ドラマとなった14年のドラマ『俺のダンディズム』(テレビ東京系)で演じた段田一郎は、『007』シリーズのジェームズ・ボンドに憧れる男で、部下の女子社員に好かれるために、ダンディな上司を目指す男だった。この役もケレン味たっぷりの濃い演技で、『探偵は早すぎる』の千曲川光に通じるものがあった。
 現在放送中の連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)を筆頭に、名バイプレイヤーとして脇から映像を支えている時は抑えていた濃さが、『俺のダンディズム』や『探偵が早すぎる』といった主演作品では、ここぞとばかりに爆発している。こればっかりだと、さすがに胃もたれしてしまうが、時々出てくる主演になった時の滝籐の芝居は注目である。
(成馬零一)

最終更新:2018/09/10 19:00
俺のダンディズム DVD-BOX
水野美紀がここでいい仕事してたとはね
アクセスランキング