『24時間テレビ』が「感動ポルノ」といわれてしまう理由

2018/08/26 20:00

 8月25日・26日に渡って『24時間テレビ41 愛は地球を救う』(日本テレビ系)が放送される。第41回目となる今年のテーマは「人生を変えてくれた人」。『24時間テレビ』といえば、芸能人によるチャリティーマラソン、闘病記などのノンフィクションを実写化したスペシャルドラマに加えて、障害や難病などを持つ人が「挑戦」「努力」する姿を取り上げる企画が定番となっている。何らかのハンディキャップに「負けないで」挑戦・努力する姿を見せることで、視聴者を感動させる……いわば「感動ポルノ」としての番組企画には、かねてより懐疑的な見方をする視聴者も多い。筆者もその違和感を覚える一人だ。

 以下は今年予定されている放送内容になる。

「車いすの少年と応援団長・出川が挑む!はじめてのおつかい in カナダ」…事故により8歳で下半身不随となった12歳の少年と出川哲朗がカナダで「はじめてのおつかい」に挑む。スカイダイビングにも2人で挑戦。

「車いすの少年と双子の兄が挑む!ウォーターショー」…脳性麻痺により車いす生活を送る10歳の少年と双子の兄が、菊池風磨、宮川大輔と共にプールでシンクロ「ウォーターSHOW」に挑戦。

「義足の少女が初登山!イモトと挑む3,000m」…先天性の病気により義足生活を送る12歳の少女が、イモトアヤコのサポートで立山登山に挑戦。

「激闘を生中継!全日本ブラインドダンス選手権」…南原清隆、松島聡、マリウス葉らが24時間テレビ当日、ブラインドダンス(ペアのうち1~2人が視覚障がい者で男女ペアを組む社交ダンス)の大会に出場。

「障がいに負けない!ひと夏の挑戦 久石譲とつくる夢の大オーケストラ」…音楽が大好きな、障害のある中高生たちが、日本武道館で大オーケストラと競演。

「YOSHIKIと盲目の天才ドラム少年 武道館で夢をかなえる生セッション」… YOSHIKIと11歳の盲目の少年が武道館でセッションする。

「イッテQ!女芸人軍団と耳の不自由な子ども達「ヲタ芸」に挑戦!」…『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)の女芸人軍団と木村佳乃、ろう学校に通う小学生14名でヲタ芸に挑戦。

 障害者が何かに挑戦するという企画が7つ用意され、うち6つは、子どもによる「挑戦」だ。「障がいに負けない!」と謳っているものもあるのだが、異国の地での「はじめてのおつかい」や、ウォーターショー、ダンス選手権への出場、有名音楽家や大オーケストラとともに日本武道館で演奏、芸能人とともにヲタ芸……となれば、子どもたちにとっては、障害の有無にかかわらず「挑戦」であろう。

 制作側としては、挑戦者にハンディキャップがある分、より困難を伴ったり、努力を求められることが予想され、健常者の挑戦よりも乗り越えるべき壁が高いため、視聴者へ与える感動も大きくなる……と踏んでいるのかもしれない。しかし、ハンディキャップへの正しい理解を広めようという目的も番組主旨のひとつであろうが、にもかかわらず、障害者による挑戦・努力であることをことさらに強調した企画は本末転倒ではないだろうか。

 出演者の頑張りに心打たれ、勇気づけられた視聴者のリアクションは、「障害者だってこんなに頑張っているのだから、私も頑張ろう」「障害者だってこんなに頑張っているのだから、お前も頑張れ」と、無意識に障害者を見下すようなものかもしれない。そして『24時間テレビ』に登場する障害者やその家族たちは、障害者を代表する存在というわけではない。すでに障害を受容し、生活基盤の整っている人々に限定して強いスポットライトを当てることで、逆にその周辺が暗く見えなくなりかねない。

 また、エンタメコンテンツとして消費する性質上当然なのかもしれないが、チャレンジ障害を受容できない葛藤であるとか、障害を障害たらしめる社会制度の不備、現存する偏見の解消などといったテーマに時間が割かれることはない。

 感動ポルノというのは、思いがけない感動ではなく、最初から約束された感動(難題に挑戦し、達成することで視聴者の感情を揺さぶる)を提供されているような、なんとも言えない気持ち悪さがある。チャリティー番組そのものがいけないわけではなく、障害者を挑戦や努力、勇気、感動のアイコンとして利用する姿勢をそろそろ見直すべき時ではないだろうか。

最終更新:2018/08/26 20:00
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