仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

恋愛マスター・くじらの“お悩み相談”の巧妙さ――「都合のいいオンナ量産」の仕掛けとは?

2018/08/16 21:00

くじらの恋愛セオリーを真に受けることへの懸念

 相談した側(女性)が喜び、悩み相談のブログがPVを稼ぎ、セミナーなどもにぎわっているようだから、ビジネスとしては成功である。しかし、くじらの恋愛セオリーをあまり真に受けると、つらい現状からあえて目をそらす、都合のいいオンナが量産されるという懸念がある。

 例えば、くじらのオフィシャルブログには、「同僚とデートをし、カラダの関係を持ったが、付き合いたいと言ったら相手にはぐらかされた。それなのに夏休みには一緒に旅行に行きたいと言われているが、社内なので穏便に別れたい」という女性からの悩みが掲載されている。

 恐らくその男性は、真面目に交際するほどではないが、ヤる相手としてキープしておきたいというのが本音だろうと私は推測するが、くじらは女性に対して「何もかも、相手からもらおうとしている」「物乞いみたいな恋愛」と辛らつである。くじらいわく「愛は自分でいくらでも生産できるもの」「恋愛とは、それを与えたい人を見つける作業」だそうだが、くじら理論だと「自分が捧げるだけで、満足するのが恋愛」になってしまい、相手、つまり男性だけがトクをすることになってしまうことに、読者の女性たちは気づいているのだろうか。今の状態に疑問を持ったり、相手に関係性を尋ねることを「物乞い」と怒られたら、女性は「自分が黙っていさえすれば、いい関係を保てるのだ」と思ってしまう可能性がある。

 くじらは2回結婚しているが、『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、若林が「(くじらは最初の)結婚式の帰り、その足で浮気相手の家に向かった」と暴露している。実家が資産家なこともあって溺愛されて育ち、芸人として売れなくても生活には困らない。離婚が成立して慰謝料が発生しても、親に払ってもらうというダメぶりを発揮したそうだ。くじらの行動と恋愛理論を重ねてみると、クチのうまいダメ男の自己弁護のように感じられるのだ。

 悩みを相談することで、さらなる問題が発生しては意味がない。あまりに心地いい理論には、何かワナがあるくらい思っておいてもよさそうだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2018/08/16 21:00
世の中には、誰とでも幸せになれる人と、誰といても幸せになれない人の二通りしかいない。
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