【特集:目黒事件から改めて虐待を考える】第4回

虐待した保護者、虐待された子のその後は――? 児童相談所の「措置機能」を考える

2018/08/20 19:00
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子ども家庭福祉学者・柏女霊峰氏

 東京都・目黒区で5歳の船戸結愛ちゃんが亡くなった事件。父親から日常的に暴力を振るわれ、十分な食事を与えられず衰弱死したという悲惨な虐待の内容と、結愛ちゃんが書いた「おねがい ゆるして」という手書きの文章は社会に大きな衝撃を与えた。

 今回の特集では、あらゆる視点から虐待が起こる要因や予防策を探るために、5回にわたって専門家へのインタビューを掲載する。

 第4回は、淑徳大学 総合福祉学部 社会福祉学科教授である子ども家庭福祉学者・柏女霊峰氏に、児童相談所の“措置機能”に関する見解を聞いた。児童相談所は4つの基本的機能を持ち、それぞれは「市町村支援機能」「相談機能」「一時保護機能」「措置機能」となる。ここでいう措置とは、児童福祉法において、県または児童相談所が実施する行政処分のことを指す。噛み砕いて言うと、児童相談所では、虐待した親/された子どもに児童福祉司などが指導を行うほか、一時保護した子どもを親元に戻すか、乳児院・児童養護施設などに入所させるか、里親に委託するかの判断も下しているのだ。虐待を繰り返さない、死に至る子どもをなくすため、児童相談所における措置機能の“有効性”と“課題”に迫る。

【第1回】「加害者の半数は実母」「幼児より新生児の被害が圧倒的に多い」――児童虐待の事実をどのぐらい知っていますか?

【第2回】児童相談所の権限強化や警察との全件共有は、本当に救える命を増やすのだろうか?

【弟3回】悲しいことに結愛ちゃんが書いた「ゆるして」は珍しくない……子どもへの暴力を認めている日本の現状

児童相談所の「措置機能」とは?

――児童相談所には、措置機能があります。具体的に“措置”とは、どのようなことをするのですか?

柏女霊峰氏(以下、柏女) 児童相談所は都道府県が運営する行政機関なので、措置は行政処分として行われます。主に「在宅措置」と「施設入所・里親委託等措置」の2つがあり、「在宅措置」では、児童福祉司が自宅に赴いたり、ほかの福祉事務所や児童発達支援センター、児童家庭支援センターや児童委員などに委託したりして、保護者や子どもに対して指導を行います。「施設入所・里親委託等措置」は、児童養護施設や乳児院などの入所型の施設や里親、ファミリーホームに子どもの養育を委託することです。

――どのような措置を取るかはどうやって決まるのでしょうか? ガイドラインのようなものがあるのですか?

柏女 本来、行政手続きを進めるときは、行政手続法に則って行われなければなりませんが、措置は“その子どもの幸せのために何が必要なのか”という観点で判断されるため、そのプロセスにその手続きが含まれているとみなされています。また、例えば生活保護基準のような、入所のための基準が設けられているわけではありません。なので、児童福祉司や児童心理司、一時保護所の児童指導員、保育士といった専門家がチームとなって議論し、最終的に児童相談所の所長が、どのような措置を取るか決定します。どの措置がベストなのかは状況によって違うので、まさにケースバイケース。医師が、患者の治療方針を決めるのと似た感じですね。ただ、性的虐待や、子どもの命が危険にさらされている場合は、早急に保護者から引き離し、施設や里親に預けるのですが、保護者が施設入所等の措置に同意しない場合は、裁判所にその判断が委ねられます。

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