国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長・松本俊彦氏インタビュー

「アルコール依存症」は女性のほうが発症しやすい! その社会的背景と対策を医師に聞いた

2018/07/27 15:00

治療に重要なのは、アルコールに悩む人たちとのつながり

 アルコール依存症の予防策としては、日本酒なら1日1合、ビールだと1日中ジョッキ1杯程度にとどめることが目安になると松本氏はいう。それ以上の飲酒をしてしまった場合、次の日はお酒を飲まない「休肝日」とすることが重要なのだが、アルコールの離脱症状は最後にアルコールを摂取してから24〜72時間の間でピークを迎える。そのため、少なくとも休肝日は2日間連続で取り、その期間、苦痛を感じなければ、アルコール依存症ではないと判断していいという。

 では、万が一、アルコール依存症にかかってしまった場合には、どのような治療法があるのだろうか? 松本氏は以下のように説明する。

「まずは専門病院に行って、離脱症状を抑えながらアルコールを解毒することが第一ですが、それだけでは中毒症状――つまり、“脳が酔った状態”を治すだけ。なので、大事なのはこれまでのお酒との付き合い方を根本的に変え、お酒でうやむやにしてきた、自己中心的な生き方を改めること、すなわち、“心が酔った状態”を治すことが必要です」

 そのためには、アルコール問題に悩んでいた当事者たちが集まる自助グループに参加することが非常に効果的だという。

「自助グループには、日本全国の各地に点在する『断酒会』や『AA(アルコホーリクス・アノニマス)』といったものがあります。そこで、お酒で苦しんだ経験を持つ人たちの体験談の中に“過去の自分”を見いだし、初心に立ち返って断酒に取り組むことができますし、アルコールを手放した後の、『未来の自分』という希望を手に入れられます。実際、自助グループでは多くの人が断酒に成功しています」

 また、家族のアルコール依存症に悩まされているような場合なら、政令指定都市などに設置されている保健行政機関「精神保健福祉センター」に問い合わせると、専門家が無料で相談に乗ってくれるという。

 「孤立こそが人を依存症に追い込み、すでに罹患している依存症を悪化させる原因でもある」と松本氏。だからこそ、専門病院での治療と並行して、自助グループとコンタクトを取ることが大切で、さらにもし本人が拒んだ場合には、家族だけでも、依存症者家族のための自助グループや保健行政機関の支援を仰ぐべきだ。まずは家族が悩みを抱え込まず、社会的な孤立を解消することが、本人にとってもアルコール依存症から脱する第一歩なのだ。
(福田晃広/清談社)

最終更新:2018/07/27 15:00
臨床心理学増刊第8号―やさしいみんなのアディクション
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