【連載】庶民派ブランドの落とし穴

GU(ジーユー)が抱える3つの地雷! 「ガウチョパンツ100万本ヒット」以降、停滞するワケ

2018/07/21 18:00

ジーユーには3つの弱点がある

 では快進撃を続けてきたジーユーがどうして停滞期に突入してしまったのでしょうか。ジーユーの“3つの落とし穴”を考えてみたいと思います。

1.ステイタス性は皆無……元ルイ・ヴィトンデザイナーとのコラボ商品が大量売れ残り!

 低価格トレンドという部分は評価されていますが、“ステイタス性”は今のところ皆無です。ユニクロが過去にジル・サンダーや、「UNDERCOVER(アンダーカバー)」の高橋盾など、著名デザイナーとコラボし、今また、クリストフ・ルメールやJWアンダーソン、トーマス・マイヤーなどの著名デザイナーとコラボをすることでステイタス性を確立してきたのとは対照的です。ジーユーも、今春にはルイ・ヴィトンやディオールオムのデザイナーを歴任したキム・ジョーンズと組み、コラボ商品を初めて発売しましたが、大量の売れ残り品番が390~990円というひどい投げ売り状態となっており、ステイタス性の確立的には今のところ寄与していません。この実績が示す通り、ステイタス性を確立するには今後長い時間が必要となり、そこまでジーユーは我慢し続けられるのかということになります。消費者にとって、ジーユーのアイテムを身に付ける意義が、今のところ薄いともいえるかもしれません。

2.トレンド商品主体で大ヒットアイテムが生まれにくい!

 ジーユーが支持された理由は、間違いなく10年に「トレンド対応」を強化したことです。ちょうどH&Mやフォーエバー21などが、前々年や前年に日本に上陸しており、トレンド対応ブランドに注目が集まっていました。しかし、そこを強化して、なおかつユニクロのように同一品番が大量に売れることは、ちょっとあり得ません。トレンドという嗜好に対応するわけですから、品番数が多くなり、それぞれが一定数量売れるということになります。ですからガウチョパンツが100万枚も売れたことは、かなり珍しい状況だったというわけです。

 品番数が多くなると、必ずそれぞれに売れ残りが生じますから、その分、管理が煩雑になります。ジーユーがガウチョパンツの後に大ヒット商品を生み出せないことは、しまむらが「裏地あったかパンツ」の後に大ヒット商品を生み出せないことと似ています。「ジーユーの“今”はやってるあのアイテムが欲しい!」と思えないのは、消費者には魅力減となるでしょう。

3.「ジーユーといったらコレ!」というアイテムがない

 これは2と少し関係しますが、多様な嗜好に対応するために品番数やデザイン数を増やせば増やすほど、商品は多岐にわたり、その結果、ブランドとしての「顔」「シンボル」が見えにくくなります。例えば、(実際の売れ筋とは別として)、ユニクロなら「フリース」「ウルトラライトダウン」「ヒートテック」などが、またリーバイスなら「501」というアイテムが思い浮かびますが。ジーユーでは、そういうシンボリックなアイテムがパッと思いつかず、ある意味、ブランド化しにくいとも言えます。

 ジーユーが今後、さらなるビッグブランドを目指すなら、どのようにしてシンボルを作るのかが課題になります。もちろん、それは商品でなくてもいい。ロゴでも店舗の外観でも内装でもなんでもいいのです。ジーユーといわれたときに、消費者が思い浮かべられるシンボルがないと、長く愛されるブランドにはなれないのではないでしょうか。

全身ユニクロ! 朝、マネするだけ
確かにあの頃、右見ても左見てもガウチョだった
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