『水曜日のダウンタウン』が放送開始以来引き起こし続けてきた騒動の数々

2018/06/27 20:00

 『水曜日のダウンタウン』(TBS)のお笑い芸人を連れ去る企画で、現場に居合わせた人から110番通報が相次ぎ、警視庁が番組関係者に厳重注意をしていたことが各メディアで報道され話題となっている。この騒動は、5月22日に恵比寿駅付近で番組スタッフがコロコロ・チキチキペッパーズのナダルを連れ去る場面を撮影していたところ、一部始終を見ていた通行人が本当の拉致事件だと勘違いし、110番通報が相次いだ。通報を受け、誘拐の疑いで警察が捜査をしたところ、TBSの番組企画であることがわかり、警視庁は関係者に厳重注意を行った。TBS社長室広報部は<警察と関係者にご迷惑をおかけして誠に申し訳ありませんでした。当該企画は見直しを検討しています。今後、再発防止に努めます>(6月21日付ニュースサイト「ハフポスト日本版」)とコメントを出している。

 『水曜日のダウンタウン』は人気お笑い番組であるが、以前にも警察沙汰にまで発展した騒動を起こしていた。2016年、安田大サーカス・クロちゃんが出演する「クロちゃん、どこかに閉じ込められてもTwitterさえあれば助けてもらえる説」という企画の収録では、一般の住民に迷惑が及び企画中止となった。これは、とあるマンションの一室に閉じ込められたクロちゃんが、自身のツイッターから発信する部屋の特徴や、そこから聞こえる音などのヒントを頼りに、フォロワーからの救出を求める企画だったが、居場所を探すネットユーザーの迷惑行為が起き、番組側がツイッターで<開始以来数多くの誤情報により、関係のない一般の方にご迷惑をおかけする事態が発生しております。この状況を重く受け止め、この時点をもって企画を中止・終了させて頂きます>と呼びかけることになった。

 警察沙汰に至らなかったものも含めれば、『水曜日のダウンタウン』が“謝罪”してきた企画は少なくない。

 まずは、2015年の「ブックオフの福袋買うヤツどうかしてる説」で起きた騒動。これは、タイトルの通り、ブックオフの福袋について「買うヤツはどうかしてる」といった言葉を用いながら紹介。これについて番組はホームページ上で<あたかも福袋の中身に価値がないかのような誤解を視聴者に与えてしまいました>と謝罪。また、取材にあたり企画の意図を事前に説明し理解を得る努力を怠っていたとして、取材に協力したブックオフや福袋を購入した人などに謝罪した。この企画ではブックオフ以外にも、100円ショップの得得屋の福袋も紹介し、「安けりゃ何でもよいというわけでもなく、1つも売れず」といった表現を用いた放送がなされたのだが、後に、得得屋を経営する株式会社イーシーアイの許諾を得ないまま放送していたことや、「1つも売れず」は誤りで、実際は10袋完売していたことが発覚。これに対しても番組はホームページ上で謝罪している。

 2016年にも問題が起きた。「水戸なら今でも印籠の効果あるんじゃないか説」という企画で、水戸黄門に扮した出演者が喫煙する若者を注意する場面が放送されたのだが、このやり取りで水戸黄門役の出演者に反発する若者がエキストラであることを番組が放送で伝えておらず、水戸市は「放送内容は虚偽によるもので市のイメージが損なわれた」として、放送倫理・番組向上機構(BPO)に意見書を提出した。結果的にBPOは審議の対象とはしないことになったが、TBSの武田信二社長は定例会見で水戸市側に謝罪。番組スタッフにも<いい出来だとは僕自身は思わない。もう一回、議論を深めて、もっと心から笑えるようなバラエティー番組を作ってほしい>と苦言を呈している。

 また、同年には、「偉人の子孫 教科書で自分の先祖に落書きしない説」という企画で石川啄木のひ孫を紹介したのだが、この人物は遠縁ではあるものの、ひ孫ではないことが発覚。番組はお詫びのコメントを出した。

 2017年には、番組スタッフが逮捕されるという騒動もあった。『水曜日のダウンタウン』を担当する制作会社のディレクターが児童買春で逮捕されたのだ。定例会見でTBSの伊佐野英樹編成局長は<スタッフの逮捕は事実。社員ではありませんが、非常に遺憾。制作会社からの申し出を受け、すでに番組からは外れていると聞いている>としたうえで、<人間としての問題で、引き続き正してやっていくということ>と今後の対応を語っていた。

 このように、『水曜日のダウンタウン』は2014年の放送開始以来、幾度となく謝罪に必要な場面に陥り続けてきたわけだが、6月24日放送『ワイドナショー』(フジテレビ)で、今回のナダル連れ去り騒動についてコメントした松本人志は、攻めた企画を売りにする番組の特性上、このような問題が起きてしまうのは致し方ないと説明している。

<本当に申し訳ないです。これはちゃんとやらないといけないんですが、言い訳をするつもりはないですが、ストレートにストライクを狙いにいく番組じゃないじゃないですか。なんかこうギリギリのところを狙いにいく。それだけにたまにデッドボールが出ちゃうんです。出ちゃうんですが、これは、ビーンボールではなくて、ちょっとすっぽぬけちゃうというか>

 確かに、『水曜日のダウンタウン』は、“ギリギリを狙う企画”を連発し、番組ファンもその姿勢に惹かれている。今回のナダル連れ去り騒動に対するリアクションでも「これで番組が大人しくなったら嫌だ」といった声も多い。ただ、警察まで出動するような問題を引き起こしてしまう制作手法には改善の余地があるはず。もうそろそろ番組コンセプトとコンプライアンスのうまいバランス感覚を見つけ出さないと、番組自体が終わらざるを得ない状況にまで追い込まれかねない。

(倉野尾 実)

最終更新:2018/06/27 20:00
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