【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

娘はパパに会いたがっているが、元夫は「娘に会いたい」と言ってこない

2018/06/28 15:00
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Photo by Ashley Webb from Flickr

わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第17回 寺田倫子さん(仮名・29歳)の話(後編)

 知人の紹介で出会った、くまのプーさんみたいな5歳年上の男性に一目惚れ。笑いのツボが合うところも好きになった理由だった。2人の子を連れて出て行った前妻と彼の離婚が成立した後、同棲を始めた途端にモラハラ男だったことが発覚。しかし、妊娠がわかり、結婚、出産した。その後も変わらない態度に我慢できなくなり、役所に相談してDVシェルターに身を寄せた。

(前編はこちら:くまのプーさんみたいな彼に一目惚れ! 実は“モラハラ男”で出産後、シェルターへ避難)

■DVシェルターから母子生活支援施設へ

――DVシェルターへは、どうやって行ったんですか?

 すべての窓が覆われた車で連れて行かれました。携帯は預けさせられるので、場所の確認もできません。だから、どこに連れて行かれたのかわからないんです。それこそ関西にあることしかわからない。ひどい暴力夫から命からがら逃げてきたママさんなんかは、どこにいるのか絶対バレちゃマズいじゃないですか。もしかすると探偵に頼んで場所を特定して、追いかけてくるかもしれないですから。だから秘匿は仕方ないです。

――シェルターは、どんなところでしたか?

 テレビのある個室をあてがわれます。3食バッチリ付いていて、おむつとかも全部常備されていて、お金は一切かからない。入所していたのは、せいぜい3組ほど。入れ替わりは激しかったです。連絡先の交換は禁止。あちこちにアザがあるのを隠してるお母さんが、けっこういました。それでも子どもたちは割と健全でしたし、お母さんも一見普通の人たちでした。

――以前この連載でお聞きした中に、シェルター生活の不自由さについて不満を話していた人がいました。

 私もすごく嫌でした。1カ月間、本当に牢屋かなって思いました。携帯は没収されましたし、外出は禁止。だから本当に何もできない。娘は食事が合わなくて、ずっと下痢をしていたんですよ。なのに「栄養士が考えている食事なんやから、そんなはずあらへんよ」「これはごっつい体にええから」と言われて看護師さんが見張っている目の前で飲べたり食んだりさせられました。買い物をお願いしても全部却下でしたし。電話するにしても、施設内の公衆電話。スタッフが見ている中での電話です。外出禁止ですから、仕事をしていても辞めなきゃならないし、子どもたちも保育園や学校に行かせられない。そんな環境。うちの子はまだ3歳だったので問題なかったんですが、小学生は勉強室で自習してましたね。

――そうですか。やっぱり逃げるために、いろんなことが制限されるんですね。

 本当なら2週間がリミットなんですけど、結局1カ月いました。その間に次の行き場所を決めるんですが、私が母子生活支援施設(母子施設)に行くと言わなかったので、出してもらえなかったんです。私の場合、彼は追ってこないから大丈夫だったのに。

――母子施設は、DVシェルターと比べると何が違いますか?

 住むところがタダで、スタッフが支えてくれるという点で共通していますが、母子施設は母子の自立を促すための施設です。1階に受付を兼ねた事務所があり、そこにスタッフがいて、入所者の将来をサポートしてくれます。心理士とか診療士、保育士などもいました。働きに出る間、子どもを預かってもらいました。仕事ですか? 今は週5回、家事代行業スタッフとして9時~5時で働いています。

 DVシェルターと違うところは、自由だということですね。携帯を持っていてもいいし、ネットもできるし、午後10時までなら外出ができる。食事は出ないから、自炊しなきゃいけないし、働かなきゃいけない。母子の自立を支援する施設なので、貯金をしないといけないとか、仕事のシフトを全部申請しないといけないとかということもあります。あと嫌なのは、人は呼べませんし、外泊は禁止。恋愛禁止。男性と会っていたとか、そういった理由で何人か退所させられてます。若い子とかが。

――母子施設の住み心地はどうですか?

 今で1年。あと1年で退所します。相変わらず自由は制限されていますが、夫と暮らしていたときよりは断然幸せかな。彼と暮らしていたときは、家に帰ると常に嫌な上司がいるような感じでしたから。

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