【連載】オンナ万引きGメン日誌

万引きGメン・澄江(65歳)、スーパーの品出しパートだった私が保安員になったワケ

初現場で捕捉した、パンチパーマ少年

 保安デビューの日は、関東郊外のディスカウントストアで、商品のサングラスをつけたまま外に出たパンチパーマの少年を捕捉した記憶が鮮明に残っています。生意気そうな少年に恐る恐る声をかけると、意外にも逆らうことなく素直に従ってくれので、もしかしたら根はいい子なんじゃないかと思いつつ警備室に連行しました。あとでわかったことですが、外国人は別として、男は女に、なかなか手をあげたりしないものなのです。

「万引きです」

 警備室に少年を連れて行くと、そのインパクトある姿を見た制服警備員は顔をひきつらせて、目を合わせないように俯いてしまいました。あまりの冷遇ぶりに動揺しながら、新人であることを悟られないよう人定事項を聴取し、店長の到着を待ちます。すると突然に、パンチパーマの少年たちが、警備室に乱入してきました。

「いますぐ○×くんを返せ!」
「おい、ねえちゃん。お前、地元どこだ? 攫っちゃうぞ、この野郎!」

 まだまだあどけなさの残る顔立ちと鬼剃りのパンチパーマの組み合わせがおかしくて、少しも怖くありませんでしたが、否応なく矢面に立たされた制服警備員はタジタジな様子です。まったく収まりがつきそうにないので、タイミングよく表れた店長に頼んで警察を呼んでもらうと、それを察知した少年たちは囚われの仲間を見捨てて、そそくさと退散していきました。

「また、お前か……」

 近くの交番から駆け付けた警察官は、被疑者席に座る少年の姿を見るなり、呆れた顔で大きなため息をつきました。場の状況から察するに、この少年は地元で有名な暴走族のメンバーの1人で、日常的に警察の世話になっているようです。つい先日も、シンナーを吸った状態で他人のバイクを勝手に乗り回して捕まったそうで、「お前は少年院行きだ」と警察官に脅されていました。当の少年は、ろくに言葉を発することなく警察官を睨みつけるばかりで、反省の様子は微塵もみられません。少年院など、怖くない。そんな強がる気持ちばかりが伝わってくるのです。

 事件処理を済ませるため、少年とは別のパトカーで警察署に行くと、少年課の取調室に案内されました。たばこの煙で黄ばんだ部屋のなかで、座り心地の悪いパイプ椅子に腰を下ろせば、自分が犯罪者になったような気になるものです。それが不思議で、冤罪事件の温床を垣間みたような思いがしました。

「こいつ、悪いヤツだから、ちょっと時間かかるよ」

 “長さん”と呼ばれる初老の刑事は、苦々しい顔でくわえ煙草をしたまま言いました。犯人の少年は隣の部屋で取調べを受けており、体のデカい若い刑事さんが担当しています。

「てめえ、何度言ってもわからねえなら、道場で叩き直してやろうか?」
「あんまりいきがってると、締め落とすぞ!」 

 年齢より遥かに落ち着いていて、あまり怯まない感じの少年だったので、刑事さんも熱くなってしまったのでしょう。隣の部屋から時折聞こえてくる怒号や机とパイプ椅子がぶつかりあう音はプロレスのようで、大きな音が発せられるたびにドキリとしたことを覚えています。いま思えば、昔の警察は随分と威圧的で、人権意識の低い人ばかりでした。

 ひと通りの書類を書き終えて、長さんに先導される形で廊下に出ると、壁際に設置されたブラウンのベンチシートに、ひとりの中年女性が座っていました。みれば、身体全体から貧苦が漂っており、昭和枯れすすきを彷彿させるほどです。

「このたびは、ウチの息子がご迷惑をおかけしまして……」

 先ほど捕まえた少年のお母さんだった彼女は、消え入るような声で謝罪の言葉を述べると、その場に泣き崩れて私の足首をつかみました。

「ね、お願い! 今回だけは、許して! あの子、少年院に行くことになっちゃうの」

 確かに、彼女の可愛い息子を少年院の入口まで連れて行ったのは私です。しかしながら保安員の仕事は被疑者の捕捉で、その後の処分に関わることはありません。自分が捕まえた犯人の母親に謝られても居心地が悪いだけですが、それよりも自分の選んだ仕事が持つ破壊力を実感して心身が震えて、この場から逃げ出したい気持ちになりました。でもそれが嫌ではなかったから、いまもこの仕事を続けているのだと思います。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

最終更新:2018/08/28 11:38
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澄江ねえさん! よろしくお願いします!!

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