“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験に「父親」は必要ない? 試験本番、夫に「綺麗ごと言わないで!」と激怒した妻の告白

2018/06/10 17:00

「主人には全て“相談”というよりも“事後報告”でした。『春香は私がきちんと育てなければ!』って思い込んでいたのです。中学受験という選択も、私が1人で決定したようなもの。主人は同学年の中でも小柄で体力もない春香に、中学受験は負担だと思っていたようですが、私の熱意に負けてか特別な反対はしませんでした。今、思えば、私がヒートアップして、春香に『どうして同じミスをするの?』『そんなやる気のない態度で合格できると思っているの?』というような不用意な言葉かけをした時、主人は春香を慰めたり、会社の帰りに『ご褒美』と言ってはデザートを買って来てくれたりしていました。でも、余裕がなかった私はそういう主人に感謝をするどころか『何もしないくせに、いいとこ取りばかりして!』って苦々しく思っていたのです」

 由佳さんはこの頃、夫のやることなすこと全てが癇に障り、喧嘩にはならないものの、夫婦間の会話は、ほどんどなくなったそう。そのため、夫を“毎日帰ってくるよその人”のような感覚で見ていたそうだ。

不合格続きで泣き喚く妻に、夫が提案したこと

 やがて、春香ちゃんも6年生になり、2月1日の受験本番を迎える。もともと、とても優しくおっとりした性格の春香ちゃんにとっては、本番のプレッシャーが重すぎたのか連戦連敗で1つの合格証書も受け取れずに、ついに2月4日の朝を迎えてしまった。

 意気消沈する春香ちゃんと、泣き喚く由佳さんを見た夫が、「今日は家族みんなで受験会場に行こう」と言ったそうだ。

 受験の合格者には定員があるので、“椅子取りゲーム”のような側面がある。東京・神奈川の中学受験で言うと、受験回数を重ねるごとに合格定員はドンドンと減っていくのだ。春香ちゃんの2月4日の受験校は20名定員に200名が押し寄せる状態であったという。

 受験日程後半の受験会場ではよくある光景なのだが、泣き出してしまう子や鼻血が止まらない子などもいて、その光景に親の方が参ってしまうことがある。由佳さんは春香ちゃんを送り出した後、その場に留まることできず、夫と一緒に学校近くのカフェで待機することにしたのだそうだ。

 カフェで涙が止まらない由佳さん。しかし夫から「みんなで頑張ってやってきて良かったね」と告げられ、驚いて「そんな綺麗ごとを言わないで! 春香は今、全落ち状態なのよ? なんで受験なんてやったんだろう? 小さな春香にこんな思いをさせてしまって……。私が悪かったと思ってる……」と反論したという。

 由佳さんは、当時のことを振り返り、その時に夫から言われた言葉を一生忘れないと語る。

「主人は私にこう言ったんです。『やって良かったじゃないか! この経験は決して無駄にはならない。君には本当に感謝しているよ』」

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