インタビュー

薬物依存者の「見た目激変」は嘘八百!? 医師が「薬物タレントの外見変化」真相を明かす

2018/06/06 16:00

ゾンビのような見た目になるのは“死ぬ直前”だけ

 薬物使用で見た目は変わらない――取材開始早々、意外な事実が明るみとなったが、松本先生は、世間にはびこる“勘違い”を解説してくれた。

「確かに薬物によって外見が変わるというイメージは強く、昔、文部科学省による高校生の『薬物乱用防止啓発ポスターコンクール』の審査員をしたとき、みんな目が落ち窪んで、頬がこけているゾンビのような絵を描いていました。しかし、そういう薬物依存者は本当に重篤な、それこそ“死ぬ直前”の人にくらいしかいないのではないでしょうか。それに、田代まさしさんが逮捕されたときの“げっそりした顔の写真”がよくネットに出回っていますが、あの顔と薬物との因果関係はわかりません。もしかすると、別の事情で体調を崩していた可能性もあります。クスリを使うと不摂生になって、顔がちょっと疲れて見えるというのはあるかもしれませんが、個人差があります。少なくとも誰もが明らかに見た目が変わることはありません。それにクスリを使っていなくても、顔が疲れている人は普通にいますよね」

 松本先生いわく、「例えば、若者に薬物を勧める薬物依存者というのは、ちょっとイケてる年上のお兄さんのような外見の印象なんです。だからみんな、『ああ、クスリをやっても大丈夫なんだ』と思ってしまうわけです」とのこと。確かに、薬物依存者の外見が病的であれば、誘われても手を出さない人が大半なのかもしれない。

「外見は本当に人それぞれなんです。他者から見て『ちゃんとしているな』という場合はクスリを使っているときで、『普段よりちょっとヨレているな、やつれているな』という場合はクスリを使うのを我慢しているときなんて人も結構います。もちろん、重篤な人は見た目が変わる場合もありますが、そこまでいくのはごく一部。見た目だけではクスリを使っているかどうかはわからないし、だからこそ逮捕されたときに『まさかあの人が』と驚くんです」

 世間では、こんなウワサも蔓延している。16年に覚せい剤で逮捕された、元プロ野球選手の清原和博と俳優の高知東生は、「色黒で眼光が鋭い」という共通点があり、ネット上では、これらもまた、薬物依存者の特徴的な見た目だとささやかれていたが……。

「じゃあ、酒井法子さんが色黒だったか、眼光が鋭かったかという話です。色黒というのは、薬物の影響ではなく、日焼けサロンに行くことを好むカルチャー圏の人たちが、たまたまクスリに近いところにいるというのが真相なのではないかと思っています」

 松本先生の話によると、一部ネット上でウワサされている「やつれた顔や体を隠すために色黒にしている」という説も「患者さんからそんな話は聞いたことがないです」とのこと。また、薬物を使用すると、体を虫が這いずり回る感覚を覚えるため、皮膚を引っ掻き回してしまい、それを隠すために焼いているという説もあるが、「確かに重篤なコカイン乱用者ではそうした症状が出ることが知られていますが、めったに出る症状ではありません。覚せい剤でもそういった症状が出る人もいますが、かなり重症な人です」。コカインといえば、15年に逮捕された女優・高部あいが思い浮かぶが、逮捕時の彼女は肌が白く、見た目に何の違和感もなかった。

「覚せい剤を使用している状態の時にはテンションが高くベラベラしゃべるというのは、確かにその通り。瞳孔が開いて目がキラキラして見える、目が大きく見える、また汗ばんで肌がテカッているというのも特徴ですが、薬物を使用していない人でも、こういった状態になる人は珍しくありませんよね。あと、ろれつが回らないともよく言われていますが、むしろ覚せい剤を使うと、早口になり、滑舌がよくなります。ろれつが回らないのは、恐らく覚せい剤で上がったテンションを抑えるために、医者からもらった安定剤を飲んでいたり、あるいは覚せい剤の効果が切れて虚脱しているような場合ではないでしょうか。そもそも最も、見た目によって『この人、使ってるな』とわかる薬物は、アルコールですよ。僕は、アルコールはれっきとした薬物だと思っていて、アルコールは覚せい剤なんかよりはるかに脳みそが縮むし、内臓障害も深刻で、覚せい剤よりマシなのは、幻覚が出てこないということくらいです」

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