ドラマレビュー

豊川悦司、朝ドラ『半分、青い。』の胡散臭い漫画家役に垣間見た“本領”

2018/06/04 21:00
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NHK『半分、青い』公式インスタグラムより

 NHK連続テレビ小説『半分、青い。』は、左耳が聞こえない楡野鈴愛(永野芽郁)の半生を描いた物語。鈴愛は秋風羽織(豊川悦司)という少女漫画家の作品に感銘を受けて、弟子入りし、東京で漫画家のアシスタントとして働くこととなる。

 脚本は『ロングバケーション』(フジテレビ系)をはじめとする数々の恋愛ドラマをヒットさせてきた北川悦吏子。物語は鈴愛が生まれた1971年からスタートし、現在は1990年の東京が舞台となっている。劇中では当時の風俗が多数盛り込まれ、ボディコンの服を来た鈴愛がディスコのお立ち台で踊る場面も登場する。近年の朝ドラが戦前・戦中・戦後と言った昭和初頭を舞台にしたものが多かったのに対して、本作は90年代をノスタルジックな過去として描いているのも面白い。少し前なら考えられないことだが、すでに鈴愛と同じ70年代生まれが30~40代となっていることを考えると90年代も朝ドラの舞台となる時代になったのだと実感させられる。

 また、本作が80年代後半から90年代にかけての日本を「幸福なもの」として描けているのは、少女漫画の世界観をベースにしているからだろう。くらもちふさこの作品が、秋風先生の描いた漫画としてドラマに登場しているとおり、ピュアなヒロインを優しい男の子たちが取り囲むというドラマの世界観は、幸せな少女漫画そのものだ。

 幼なじみの萩尾律を演じる佐藤健を筆頭に、志尊淳、中村倫也が演じる男たちも魅力的。優れたイケメンドラマとしても格別の面白さだが、その中でも注目されているのが、豊川悦司演じる秋風羽織だ。

 秋風の漫画に感銘を受けて漫画家を目指す鈴愛にとって、秋風は尊敬すべき師匠なのだが、当の本人は何を考えているのかわからない変人。外見も長髪にサングラスという、みうらじゅんか佐村河内守かという風貌で、はっきり言って胡散臭い。鈴愛を呼んだのも、差し入れとして渡された五平餅がおいしかったからで、最初から漫画家にするつもりはなくメシアシ(食事専門のアシスタント)にするつもりだった。

 そんな天才の気まぐれで、理不尽な目に遭わされた鈴愛は激怒し、アシスタントとして働かせろと、漫画の原稿を窓から投げ捨て脅迫する。秋風は鈴愛を「岐阜の山猿」と呼んで困惑しながらも、彼女本人の面白さに興味を持って漫画を教えようとする。

 秋風先生を演じる豊川は、北川悦吏子ドラマの『愛していると言ってくれ』(TBS系、96年)『Love Story』(TBS系、01年)に出演してきた。「あのかっこよかったトヨエツが……」とショックを受けている視聴者も多いが、むしろこういう胡散臭い変人キャラこそが“トヨエツ”の本領だろう。

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