ABC局を「偽善」とする向きも

タブーを扱ってきたロザンヌ・バーのドラマ打ち切りに、米ネットでは懐疑的な意見が続出

2018/06/01 18:20

人種差別の最大タブーにも切り込んだ『ロザンヌ』

 「息子が黒人差別するのは親の影響を受けているから」という人種差別における最大のタブーをテーマにした回は、94年に放送。「人種差別主義者ではないが、黒人に対して偏見を持つ白人は多い」「黒人も大半の白人から差別されているという固定概念を持つ」と暗示する終わり方で、根が深いこの問題をもっと真剣に考えるべきだと訴えた。

 それだけに、ネット上では次第に「即座に放送打切りを発表したABC」に違和感を覚える人が増え、「トランプ大統領を侮辱しバカにしている同局深夜トーク番組の司会者はお咎めなし。いつからアメリカは自由に発言できない国になったんだ!?」「フェアじゃない」とネット上は大荒れ。その後、ABCが放送打ち切り発表直前、ヴァレリーに謝罪の電話をしていたことが発覚し、トランプ大統領が「私への侮辱発言を放送してもABCは謝罪の電話なんてしてこないのに」と皮肉たっぷりのツイートをし、やっぱり米メディアは偏向しているのかと疑心暗鬼になる人が増えているよう。

 また元NBAプロバスケットボールの伝説的選手カリーム・アブドゥル=ジャバーは、米エンタメ情報サイト「ハリウッドリポーター」に寄稿し、ロザンヌのツイートは間違っているとした上で、「『ロザンヌ』は最もリベラルな番組だった」「彼女のツイートは、ほかの差別主義者を喜ばせるかもしれないが、誰かの心を動かすものではない。でも何百万人もの視聴者を持っている『ロザンヌ』は、他人への寛容と思いやりを示していた」と、番組打ち切りが果たして正解なのかと疑問を呈している。

 ロザンヌは、91年の米・芸能誌「People」で母親から精神的虐待を、父親から性的虐待を受けていたと激白。なにも恐れず屈しない気の強い性格は、壮絶な子ども時代を乗り越えてきたからこそ培われたとされている。彼女は今、支持者に「もう我慢できない」と呼びかけており、ネット上はますますヒートアップ。今後、彼女がどんな反撃に打ってでるのか、目が離せない状況だ。

最終更新:2018/06/01 18:25
学校では教えてくれない差別と排除の話
その人のどの部分を切り取って付き合っていくか、が問われる時代
アクセスランキング