ABC局を「偽善」とする向きも

タブーを扱ってきたロザンヌ・バーのドラマ打ち切りに、米ネットでは懐疑的な意見が続出

2018/06/01 18:20
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ツイートと作品の言文不一致が起きているロザンヌ・バー

 ハリウッドでは少数派に属するトランプ大統領支持者で、21年ぶりに放送再開した国民的コメディ『ロザンヌ』で主人公を演じていた女優ロザンヌ・バー。ドラマの主人公もトランプ支持者という設定で物議を醸したものの、高視聴率を叩き出していた。

 彼女はバラク・オバマのアンチとして知られており、2008年の大統領選中に彼のことを「希望というおとぎ話しかしない男」と酷評。オバマが2期目続投を懸けた12年の大統領選では対抗心をあらわにし、彼女自身が立候補したほどだった。

 そんな彼女は、5月29日、オバマの元上級顧問でイラン出身アフリカン・アメリカ系のヴァレリー・ジャレットによる「オバマ政権の悪事をもみ消していた」という疑惑のツイートを目にしたようで、Twitterに「VJ(ヴァレリー)は(イスラム団体)ムスリム同胞団と『猿の惑星』の混血児だし」と投稿。人種差別としか思えない内容は大バッシングされ、『ロザンヌ』の放送局である米ABCは番組打ち切りを即決した。

 ロザンヌは、冗談だったというこのツイートを削除し、「ジャレット氏と全ての米国民に謝罪します」「弁解の余地がありません。後悔しかない。私の行為をかばわないで」と反省の色を見せていたが、30日になると一転。「言っとくけど私は人種差別者ではない」と反論。「全てのマイノリティの平等権のために、神経をすり減らし、家族と財産を犠牲にして局(ABC)や制作スタジオ相手に戦ってきた私の人生を、たった一度のバカげたジョークで奪い去るなんて!」と、ABCに宣戦布告した。

 でっぷりとした体形で白人貧困層を演じるロザンヌに対して、偏見を持つ人は多い。だが、彼女が制作総指揮兼主役を務める『ロザンヌ』は、それまで地上波局がスポンサーを気にして放送しなかったタブーをたくさん取り入れ、マイノリティへの理解を呼びかける番組だった。

 1991年にはティーンの避妊問題、93年にはドメスティックバイオレンス、94年には出生前診断の結果次第で中絶するかどうかに悩むカップルのエピソードを放送。同じく94年には、レズビアン・キスシーンの放送を拒否するABCに、「だったらほかの局に移る」と脅してオンエアーさせた。95年に放送されたゲイカップルの結婚式エピソードも、ABCは渋い顔をしたが、ロザンヌが断固放送させたのである。

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