水原希子がセミヌード撮影現場を「見られたくない」ことと、インスタにセクシー写真を投稿することは矛盾するか

2018/04/10 20:00

 2001~2016年まで写真家・アラーキーこと荒木経惟氏の被写体モデルを務め“ミューズ”と呼ばれていたダンサーのKaoRi氏による告発は、大きな波紋を広げている。

▼荒木経惟の被写体を務めたKaoRi氏の告発 アラーキーの女性礼賛とは何だったのか

 4月9日には、モデルで女優の水原希子(27)がInstagramのストーリー機能を使い、KaoRi氏のnoteを引用しながら、「モデルは物じゃない。女性は性の道具ではない」と発信した。

「かおりさん長い間どれ程苦しかったか、辛かったか、想像するだけでも心が痛みます」
「この業界にいる若いモデル そして女性、男性にもこの記事を読んでほしい。モデルは物じゃない。女性は性の道具ではない。みんな同じ人間。心を交わし合う事を忘れてはいけない」

 こう綴った水原希子は、自身も20代前半の頃、仕事で次のような経験をしたと明かした。

「ある企業の広告撮影で上半身裸になって手で胸を隠して撮影」した時に「何故か沢山の男の人、多分上層部であろう20人くらいの社員の人達」がスタジオに来た。「裸だから撮影中は見られたくないと伝えたけれども、写真を確認しなくてはならないからと言う理由で、結局、仕事だからと拒否できないんだよと言う理由で」、結局、大勢の男性たちに裸を見られる環境下でその撮影を強いられたのだという。

 最後に水原希子は、自身も何度か撮影してもらったことのある荒木氏に向けて「あなたにとって女性とは一体何なんですか? 何故、長期に渡ってあなたのミューズであったかおりさんを精神的に追い込む必要があったのか」「シンプルに、残念極まりないです」と綴っていた。

 水原希子は22歳の頃に撮影した資生堂の2013年正月用ポスターに、上半身裸に手のひらでバストを覆うだけのセミヌードでうつっていた。彼女がいう「ある企業の広告撮影で上半身裸になって手で胸を隠して撮影」とは、この広告撮影を示しているのだろうか。通常、女優やモデルが露出の多い衣装で撮影に臨む際、現場はなるべく少人数で撮り、外から様子が見えないようスタッフがガードするなど最大限の配慮をすると聞く。そのうえで撮影されたフォトを、広告関係者らがブラウザでチェックするのが一般的なのだと。しかし、まだ22歳で売り出し途中だった時期の水原希子が、「仕事だから」と衆人環境で上半身裸のまま笑顔を作らなければいけなかったとしたら、しかもそれが化粧品最大手企業の広告制作現場だったとしたら、デリカシーや人権を考慮した現場が「一般的」とはとても言えないことになる。

 日本での著名人による「#Metoo」は、未だ非常に少ない。声を上げなければいけないわけではないが、それだけ声を上げづらい閉塞的な環境なのではないかと推測される。「#Metoo」に限らず、政治的な発言やジェンダー、ものの見方ひとつとっても、著名人――特に若い女性――は無難な発言が好まれ、少しでも「これはおかしいと思う」というようなコメントを出すと過激扱いされてきた。たとえば、のんこと能年玲奈(24)は、写真集とそれにまつわる展示の発表イベントで、「日本では女の子の世界観を発揮できる場所が少ない。発表できるのはまれ。テレビとか映画を見ても、(キャストは)男の人だらけで女の人は1人とか、男の人だらけ。女の人だけで成立するのは珍しい」と発言したことを、スポーツ新聞が【まるで女性活動家のよう】と報道。たちまちネットに転載され、「フェミだ」「レズなの?」と変人扱いされた。

 そんな日本の芸能界で活動をしながら、のんや水原希子は頻繁に持論を発信する稀有な存在である。特に水原は、アメリカ人の父親と日本育ちの韓国人の母親との間に生まれたというルーツから「日本人じゃないのに日本人のフリをしている」とヘイトスピーチの対象にされ、さらにインスタに投稿する写真でお尻やバストトップの形がわかる一枚(フォトグラファーの撮った写真で、雑誌等に掲載されたものであったり、そのアナザーカットであることが多いのだが)を受けて「汚い」「ビッチ」と誹謗中傷されてもいる。民族差別と女性差別を同時に受けていると言える状況だ。

 しかし水原希子は、黙らないし逃げもしない。インスタで友人の投稿写真に「いいね」したことから中国で非難を浴びると、謝罪動画をアップして誤解をとくべく釈明した。「不適切だった、不快感を与えて済まなかった」といった定型文の謝罪ではなく、彼女は自らの言葉で説明した。昨年、水原がサントリーのPR動画に出演していることに対してTwitter上でヘイトスピーチが相次いだ際は、彼女は公式Twitterアカウントで「一日も早く、この世の中の人種や性別などへの偏見がなくなってほしい。そして、世界中の人がどこにいても自分らしく生きていける世の中になるように、まずは私が私らしくこれからも強い心をもって、生きていこうと想います」と表明している。

 3月7日放送の『NEWS ZERO』(日本テレビ系)にVTR出演時には、かつては自身のバッググラウンドを「恥ずかしい」と思い「隠すようなことを」してきたと打ち明けた上で、「みんなが一緒の方向を見ないといけない。そういう暗黙のルールみたいなものが一番怖い」「アジアの女性だって意思があるし、美しいし、もっと発信していきたい」と語り、4月2日の朝日新聞のインタビュー連載「じぶん流@SNS」では、SNSの怖さを体感し、「2週間くらい泣き続け」たり悩んだこともあったが、「何が正しいのか、一目瞭然だと思う」からと「卑劣なコメントも、削除せず残して」いると語っている。

 前述したように水原希子へのバッシングとして、彼女がインスタに投稿した露出度の高い写真を“下品”で“過激”と受け止めたうえでの誹謗中傷もあるが、彼女はいちいちネット(主にまとめサイト)で話題になった写真もまた、削除していない。今回、KaoRi氏の告発を知った水原希子が投稿したインスタストーリーについて、「いつも下品な写真を自分で投稿しているくせに」と矛盾を指摘するコメントが少なからずネット上に出ているが、自ら望んで身体を露出した写真を撮影して公開することと、望んでいないのにもかかわらず裸を見られることは、たとえそれが同じ一枚の写真になったとしても全く別ものである。ゆえに水原がこれまで、セクシーな写真を公開してきたことと、セミヌード写真の撮影現場に入ってきた大勢の男性に対して「裸だから撮影中は見られたくない」と拒絶することとは、まったく矛盾しない。

 さて、これまで紹介してきたような発言をしても、水原希子はファッション雑誌だけでなく様々な広告やCMに起用され続けている。このことは、日本の芸能界を中心に活動するモデルや役者、タレントたちに、「自分の意見をちゃんと発言してもいいんだ!」と気付きを与えるかもしれない。彼女が粘り強く発信し続けること、それを応援し続けることで、少しずつでも日本も変わっていく可能性がある。そう前向きに考えたい。

最終更新:2018/04/10 20:00
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