仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

谷亮子、国民的スターから「嫌いな女」への転落に見る「女性アスリートとテレビ」の無情な関係

2018/02/22 21:00
taniryouko
谷亮子オフィシャルサイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「本当にしつこい」安藤美姫
『サンデー・ジャポン』(TBS系、2月18日)

 オリンピックのメダリストほど、知名度と好感度が高い人はいないのではないだろうか。というわけで、メダリストは、バラエティに出演する機会も多いが、お声がかかりやすいのは、“いじられる要素のある”人だ。

 例えば、“霊長類最強女子”と呼ばれ、国民栄誉賞も受賞した女子レスリング・吉田沙保里選手。結婚願望があり、『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などのバラエティ番組で、「イケメン好き」「好きな人には、自分からガンガン行く」と明かし、自ら肉食系であることを認めている彼女は、いじりやすく重宝される。最近はCMにも出演し、そこで妊婦の役を演じたことから、「たまごクラブ増刊号」(ベネッセ)の表紙も飾った。インスタグラムには、深田恭子ら女優との交友、美容鍼灸やまつエク、ネイルの画像がアップされ、ファンから「吉田さん、かわいいです」と褒められている。女性誌や女性週刊誌も、吉田を「女子力が高い」(美しいと言わないところに、一抹の含みがある)と書き立てるなど、完全に彼女のカテゴリは“芸能人”である。

 アスリートが芸能人になることに問題はないが、吉田は「かわいい」という称賛の先に何が待っているか知っているのだろうか。「かわいい」で日本をかき回した谷亮子の姿がちらつくのである。

 柔道は日本のお家芸であるものの、オリンピックではメダルが取れないという低迷期が続いていた。そこに現れたのが、谷である。久しぶりに現れた天才少女に日本は沸いた。谷の成人式に密着した番組を見たことがあるが、列席した見知らぬ女性から「かわいい!」と声が上がると、谷は手を挙げて、声援に応えていた。この時の「かわいい!」は「いつも柔道に明け暮れている谷のオンナノコとしての一面を見られた」という意味で、いわば「いいね!」を意味する「かわいい」だったと私は解釈した。この頃、女性たちは、おおむね谷に好意的だったように記憶している。

 流れを変えたのは、イチローである。谷はイチローを含めて複数人でカラオケに行き、イチローに電話番号を聞かれたそうだが、それをワイドショーの取材に対して「イチローが私を狙ってる」といったニュアンスで語りだしたのだ。プロ野球選手といえば、元アイドルや女子アナなどと結婚するのが当時の常識だっただけに(この時イチローは、女優・葉月里緒奈と破局直後だった)、うっすらと世間に「もしかして、自分のことをそっち側だと思っている?」という空気が広まっていったのだろう。

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