「日本行方不明者捜索・地域安全支援協会」理事長・田原弘氏インタビュー【後編】

行方不明者の捜索番組にヤラセ疑惑、悪徳探偵――“失踪者”と家族を取り巻くキケンな状況

2018/02/22 18:00

占い師への相談にストップをかけることも

――MPSは“組織力で行方不明者の捜索を支援される”とのことですが、具体的にはどのようなことをされているのですか?

田原 依頼人に対し、情報を集めるためにはどこでどのように尋ねればいいかといった捜索のアドバイスをしたり、発見後に届出を解除するタイミングを助言したり、それから代理人として遺体の身元確認に出向いたこともありますよ。

 またMPSのホームページでは、行方不明者情報を掲載しています。ここで情報を募っているのですが、家出をした人が、インターネットカフェで自分の名前を検索し、このホームページに行き当たって、そこで同じカフェでよく見かける人物が行方不明者として載っていることに気づき、連絡をくれることもあります。

――家族がいなくなってパニックになっている状況の方には心強いですね。

田原 行方不明者の家族というのは大変なんです。例えば、北海道にお住まいの方が、「沖縄で行方不明になった娘さんを見た」という情報が入れると、親御さんは飛行機で沖縄まで飛んでいくんです。しかし、確かに容姿は似ているものの別人だったとわかると、すぐ帰らなければならない。そして、新たに「神奈川で見かけた」という情報が入ると、また飛んでいく――こういったことが続くと、心身ともに疲弊してしまいます。ですのでMPSでは、「本当にこの情報は信頼に値するものなのか?」を吟味し、これというものを、家族の方にお伝えするといったことをしています。

 あと、依頼人の心のケアも活動の1つ。依頼人が1人暮らしの高齢者の場合など、定期的に電話をして、体調を気遣ったりもします。また、なかなか見つからず「占い師に捜してもらおうと思っている」という人の話を聞いて、「それはいくらかかるんですか?」「そうやって実際に見つかった人はいませんよ」と声をかけたり。行方不明者の家族というのは、ついマイナスな発想に陥りがち。そこから鬱などを発症してしまう方もいるので、発見につながった事例を話すなど、プラスに考えられるような声がけも意識して行っています。

――長年見つからないと、捜索を諦めるケースもあるのでしょうか?

田原 行方不明者の家族は、行方不明者の生死がわからないまま7年、震災などに遭遇した可能性がある場合ならその事案から生死不明のまま1年たつと、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。また、配偶者の場合には、生死不明の状況が3年続くと、離婚の申し立ても可能です。そのため、1年、3年、7年の区切りで諦める家族もわりといらっしゃいますね。

――失踪宣告に踏み切るのはなぜですか?

田原 長年の捜索で心身ともに疲れ切って諦めてしまう方や、保険金などの関係で申し立てを決断する方など、理由はさまざまです。ただ、失踪宣告後でも発見されれば戸籍を復活できるので、1つの区切りとして申し立てを行う方も多いです。残された家族にも日々の生活とご自身の人生がありますからね。

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