“噂の女”神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第394回】

季節はずれの天皇退位――安倍首相による皇室の“政治利用”について言及した「女性セブン」

2017/12/13 19:00
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「女性セブン」12月21日号(小学館)

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 米軍ヘリの部品が落ちた沖縄の保育園を「自作自演」とメールなどで誹謗する日本人、そして辺野古で抗議活動中の男性に「触るな、汚れる」と暴言を吐く日本の警察官。政府だけでなく国民もすっかり従属化してしまった。

第394回(12/7~12/12発売号より)
1位「天皇陛下 季節外れの退位に『安倍首相VS宮内庁』攻防全舞台裏」(「女性セブン」12月21日号)
2位「シリーズ人間 アムロが教えてくれた『私が輝く場所』ダンスインストラクター・牧野アンナさん」(「女性自身」12月26日号)
3位「今井美樹 揺れる『夫の“怪しい”優しさ』」(「女性セブン」12月21日号)

 紆余曲折の末、ついに天皇陛下の退位が2019年4月末に決まったが、女性週刊誌もこれに切り込んだ。これまでも天皇陛下(宮内庁)と安倍政権の対立がますます激化していると、さまざまな報道がなされているものの、女性週刊誌の皇室ネタは、あまり直接的に政治に踏み込むことはなかった。しかし、今週の「女性セブン」は違った。

 例えば、12月1日の皇室会議での“異変”。安倍晋三首相ら中心メンバーの楕円形のテーブルとは別に、長方形のテーブルが用意された。それは安倍首相の女房役である菅偉義官房長官のためのものだ。記事では「25年ぶりに開かれた高尚な場である皇室会議に、官邸の一存で官房長官を送り込んだことには違和感を覚えます」(皇室記者のコメント)と、これに疑問を呈す。

 さらに安倍首相の思惑として「海千山千の官房長官を送り込み、議論に“睨み”をきかせたかった」と解説するのだ。そのほか、退位時期決定に至るまでの宮内庁と官邸とのバトルの内幕が描かれるが、衝撃的なのは、安倍首相による天皇・皇室の“政治利用”について明確に言及していることだろう。

 宮内庁と安倍政権は退位時期を巡っても鋭く対立、結局は季節外れの4月に決定したが、記事では「『御代代わり』でさえ踏み台とする“算盤”をはじいていそう」として、退位後3カ月で行われる参院選と、同時に行われる可能性のある改憲に対する国民投票という、ダブル投票への影響、そして安倍首相が抱く思惑をこう指摘するのだ。

「安倍首相は、退位を1か月遅らせることで、国民的なイベントの高揚感を世間に残したまま選挙に臨もうとしたのではないでしょうか。
 さらに、これから検討がすすむ『退位の礼』や『即位の礼』を、安倍首相が中心になって派手にやろうとするでしょう。トランプ米大統領やエリザベス英女王が列席するような規模で行えば、それを取り仕切った首相として歴史に名を残すことになるわけです」(政治ジャーナリストのコメント)

 この指摘は衝撃的だ。天皇皇后両陛下は、特に第二次安倍政権発足以降、かなり踏み込んだ護憲発言を行ってきた。それは安倍首相が、憲法改正を目論み、一連の安保法制に象徴される“戦争ができる国”へと着々と歩みを進めているための危惧にほかならない。しかし、記事には民主主義や平和を尊重する天皇陛下の思いを逆手に取り、政治利用や自己PRだけでなく、退位を“イベント”として憲法改正まで突き進もうとする、そんな恐怖のシナリオが示されているのだから。

 これまで安倍政権は、配下ブレーンを“刺客”として宮内庁や有識者会議に送りこみ、また天皇陛下への個人攻撃とも思える発言さえあった。そう考えると、「セブン」記事の描くシナリオは決して絵空事ではない。この指摘が現実になってしまうのか。今後も女性週刊誌の踏み込んだ皇室記事に期待したい。

天皇125代と日本の歴史 (光文社新書)
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