中村真樹医師インタビュー

「シンデレラタイムはウソ!」「眠りの質にデータなし」――睡眠の都市伝説を医師がジャッジ

2017/12/02 17:00

巷に広まる睡眠のウワサをジャッジ!

――シンデレラタイムのほかにも、睡眠にまつわるウワサがいくつかあります。一つずつ真偽を教えてください。まず、「二度寝や三度寝は体に良くない」というのはいかがでしょうか?

中村 それは本当です。二度寝をすると睡眠慣性(眠っていた状態から覚醒状態に切り替えができず、ぼんやりしている状態)がおきて、ズルズル眠気を引きずってしまいます。

――「寝すぎも良くない」というのは本当ですか?

中村 半分本当で半分ウソです。よく「寝溜め」といいますが、きちんと眠れている人であれば、長く寝ても意味がありません。携帯を長時間充電しても、100%以上増えないのと同じですね。逆に寝不足の人であれば、平日より2〜3時間長く寝た方がいいです。ただ、日ごろ睡眠が足りていたのに、睡眠時間が急に長くなったという人は要注意。病気が隠れているサインの可能性があります。

――昼寝についてはどうでしょうか? 効率が上がるという理由で、休憩時間の昼寝を実践している人は多いようです。

中村 それは本当です。午前10時、午後2時と4時くらいは、体内時計の影響で眠気の出やすい時間になります。そこに疲れや満腹感が合わさると眠気が強くなってパフォーマンスが落ちるので、あらかじめ軽く寝ておけば、その後の眠気が和らいで効率はさほど落ちなくなります。ただ、30分以上寝てしまうと昼寝からの寝起きが悪くなって、かえってしんどくなったり、夜の眠りに影響したりするので、深い眠りに入る前である10分くらいがちょうどいいです。

――現代では、不眠に悩む人が少なくありません。睡眠薬を検討している人、実際に服用している人もいますが、「のちのち害が生じる」「認知症になる」「アルコールの方が安全」など、さまざまなウワサがあるようです。

中村 どれもウソですね。薬は本来、症状のある人が飲むものなので、服用しているのは不眠などに悩んでいる人が多い。不眠や眠りのことを過度に心配することで気が高ぶって眠れなくなる「不眠恐怖」が、不眠が長引く原因の1つなので、薬の害などを気にすることにより、かえって不眠の症状を悪化させる場合があります。認知症になるという説ですが、実は認知症の初期症状に「不眠」があるんですよ。その解消のために、睡眠薬を服用したことのある患者さんが、その後認知症を発症したという可能性もあります。また、睡眠薬は認知症を誘発するものではないことを示す研究報告もあります。

 さらにアルコールに関しては、リラックス効果で寝つきは良くなるものの、お酒が抜けるときに眠りが不安定になって目覚めやすくなります。また、睡眠のリズムも乱れてしまうんです。飲酒後は、短時間寝ただけでスッキリしたように錯覚するのも、アルコールが抜けるタイミングで眠りが不安定になって目覚めただけですね。

――最近、“よく眠れる成分”として、トリプトファンが注目されています。「眠る前にトリプトファンの多い食材やサプリを摂るとよく眠れる」ともいわれていますが、いかがでしょうか?

中村 これもウソです。眠りのリズムをつくる体内時計に関わっているメラトニンという物質は、トリプトファンを原料にしています。それでトリプトファンに快眠の効果があるといわれているのですが、トリプトファンを飲んでからメラトニンが合成されるまでに10時間以上かかるんです。つまり、寝る前に飲んでも効果はないということ。そのため、最近は朝や毎日飲むことを推奨しているサプリメントがあるものの、実際のところ、普通に食事をしていれば、トリプトファンが不足することはまずないといわれています。

 全ての人に関係がある「睡眠」の話題だけに、今後も真偽不明のウワサが世間を賑わせそう。しかし、そういったものに踊らされず、医師からの正しい情報を得ることを心がけていくべきだろう。
(取材・文=千葉こころ)

最終更新:2017/12/02 17:00
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