『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』著者・高木瑞穂氏インタビュー

「1人200万円で売買」「泳いで逃げた少女がいる」――日本に実在した“売春島”の真相

ネットを中心に過激なウワサが広まっていった

――若い女性が監禁同然で島に閉じ込められ、来る日も来る日も無理やりセックスさせられて……。とても現代の日本とは思えない状況ですね。

高木 いえ、僕の取材によれば監禁のような事実は絶対にありません。バンス(前借り)のある子は、緩やかな軟禁状態だったといえるかもしれませんが、バンスのない子であれば島の外にショッピングにも行けたし、女の子同士で飲みに行ったりする自由はあったようです。

――思ったよりも、穏やかな状況だったんですね。

高木 98年に、周辺で活動していたある情報誌の女性編集者が行方不明になった事件がありました。結局真相はわからないまま迷宮入りしたこの事件を元ネタに、「売春の闇ルートの真相を知ってしまったから消された」など、面白おかしく書き立てた雑誌もありました。また、95年には「死に物狂いで海を渡って島から逃げてきた」という17歳の少女メグミの脱走劇が、週刊誌の記事になっています。彼女が暴露した内容に尾ヒレがついて、ネットを中心に過激なウワサが広まっていったんでしょう。もちろん、島の長い歴史の上には、語られていないようなつらい思いをした女性も存在していたと思います。

――もともと目立った観光地もない渡鹿野島は、昔から性産業で支えられてきたという歴史があるんですよね。

高木 江戸時代から、この島は“風待ち港”として栄え、船乗り相手に夜伽をする女性たちが住んでいました。戦時中には、島に民泊していた航空隊の予科練生が島の商売女と遊ぶようになり、そこから全国に口コミで渡鹿野島のウワサが広まっていきました。

■クリーンな観光地化を図っている

――全国的に売春スポットはありますが、なぜそこまでこの島が賑わったのでしょうか?

高木 風光明媚で飯はうまい、若い女も買える。旅行がてら1泊して、女の子と遊べるような離島というシチュエーションは、ほかになかったと思います。訪れる男にとっては、まさに桃源郷のような島だったのでしょう。

――男性にとっては、ある種のロマンがそこにあったということでしょうか。一方で、島の栄華は長くは続かなかった。2016年に、島の象徴だった「つたや」が、資金繰りに窮して倒産しています。

高木 デリヘルやソープで気軽にセックスができる時代になり、男性にとってわざわざ島に行く価値がなくなった。女性たちも、都会の風俗で働いた方が稼げますし、代わりに外国人女性が出稼ぎにやってくるようになったことも、衰退の原因のひとつです。性産業で潤わなくなった島からは、ヤクザも手を引きました。でも、まだ細々と置屋はやっていて、10人ほどの女性が働いているそうです。

――現在、島ではかつての売春のイメージを払拭する“クリーン作戦”が行われているようです。

高木 03年に「わたかのパールビーチ」という人工の海水浴場がオープンするなど、クリーンな観光地化を図っています。島がハート型をしているので、“ハートアイランド”という名目で恋愛成就の島で売り出していたりして、少しずつ若いカップルや家族連れ客も増えているようですね。

――観光地化に成功して、島が再び活気を取り戻すことが望まれます。

高木 この島が、売春で栄えてきたのは紛れもない事実です。クリーン化が進む一方で、一部の島民には「もう一度島を盛り上げるには、やっぱり売春だ」という声もある。僕としては、どちらが良いか悪いかというのではなく、ただこの島の歴史を語る上では、売春の事実を避けては通れなかったということを伝えたかったのです。
(森江利子)

最終更新:2017/11/17 18:27
売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ

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