[ドラマで気になるアノ男]

嵐・櫻井翔『先に生まれただけの僕』で持ち味になった、役者としての「欠点」

櫻井の演技は、軽くて平坦

 櫻井の演技は基本的に軽くて平坦だ。その軽さは、例えば映画『YATTERMAN~ヤッターマン~』の主人公・ヤッターマン1号やドラマ『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系)の皮肉を言う執事のような、記号的なキャラクターを演じる際にはすさまじいポテンシャルを発揮する。

 しかし、軽い振る舞いの中に複雑な内面を抱えた人間を演じるとなると、裏側にある奥行きをうまく出せず、単純に軽くて薄っぺらい人間に見えてしまう、ということが初期の作品では続いていた。

 そんな中、大きな転機となったのは13年の『家族ゲーム』(日本テレビ系)だろう。本作で櫻井は何を考えているのかわからない不気味な家庭教師を演じ、この役には今までとは違う説得力があった。これはキャリアを積んで、櫻井の演技力が上がったからともいえるが、櫻井が30代になったことも大きいのではないかと思う。

 櫻井と同世代にあたる、30代で頭角を現した若手政治家やベンチャー企業の若手社長といわれている人たちを見ていると、年齢よりも幼く見えて心配になるが、ネットの普及以降に思春期を過ごした人間が持つ、合理的な考え方とフットワークの軽さに可能性を感じることも多い。そんな彼らと『先に生まれただけの僕』の鳴海は重なるものがある。

 その意味で、櫻井が演じてきた頭でっかちな青年は、今の30代にとってはリアリティのあるロールモデルとなっているのだろう。櫻井の軽くて平坦な芝居は、かつては欠点だったが、今はその軽さこそが役柄の説得力につながっているのだ。
(成馬零一)

最終更新:2017/11/27 16:38
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